徴兵制に途を開くというが、とくにそんな記述はない。国防意識が強調されているが、それが徴兵制にただちにつながるとはいえない。そもそも、現実に海外から侵略を受けたとき戦うことに協力することが国民の義務でないとすれば、国民は侵略を傍観しておればいいのかどうかについて、現在の憲法は回答を用意しているわけでない。
憲法改正でなく、創憲だというのも、現行憲法の改正手続きを否定しているわけではない。日本保守党は憲法無効論に近いがそれとは一線を画している。憲法改正手続きに則って、「日本国民の総意で新しい憲法を制定する」というのは憲法違反というのは少し無理がある。
「LGBT否定・外国人排除」については、草案には「婚姻は男女の結合」「夫婦同姓を要件」との記載があるが、それは現在の法制度を憲法の条文として採り入れろというだけのことであるし、LGBTを「否定」しているわけでない。外国人参政権排除も現行法を追認しているだけである。
神道についても特別な扱いを指向しているが、日本保守党よりのように他の宗教を排撃する指向ではない。参政党は創価学会の目指す方向には賛成できないが、信仰そのものを否定しないという立ち場だが、日本保守党は、創価学会を戦後の国体破壊と洗脳政治の象徴とみなし極めて攻撃的だ。
たしかに参政党の憲法改正案は、復古主義的な文体や文学的表現に辟易するし、現行法制の保守的な価値観を不必要に強く定着を志向するものだし、現状において天皇陛下の権限をヨーロッパなみに拡大するのが必要な状況もないし、むしろ現皇室がリベラルな思考を持っていることを考えればむしろ保守派が嫌がる方向に流れる可能性すらある。
総合的に見れば、ただちに世界から民主主義から逸脱するとか、軍国主義復活といわれねばならないものでなく、日本保守党のような公然たる歴史修正主義に基づき日本と自由主義諸国との関係を破壊するというほどともいえないが、およそ国民に受け入れられそうなものでないというのが公平なところではないか。