黒坂岳央です。

一般的に30代から物欲は消えると言われる。確かにこれは部分的に正しいし、多くの人に共感が得られる話ではないだろうか。その一方、逆に若い頃より高まる物欲もあると思っている。

筆者の自身の肌感覚による物欲の変化を元にこの現象を考察したい。

※なお、物欲の定義は物理的に限らず、機能や体験など消費欲も含める。

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なくなる欲求は?

多くの中年になると確実になくなる欲求、その筆頭が見栄の欲求だろう。一般的にはかつて憧れていた高級ブランド、自慢が主目的のアイテムに興味がなくなっていく。

筆者も20代の頃は自分をよく見せたい欲求がかなり強く、お金がないのに無理して高級ブランド品を買ったり見たりしていた。だが、今はまったく興味がない。手持ちバッグについては所有すらしなくなり、今は物の運搬は宅配サービスで済ませて極力手ぶらである。

その理由はシンプルで「中年になると誰もが自分の人生に集中する」からである。一通りいろんな経験をすることで他人に見栄を張ることの虚しさを理解し、承認欲求の消化は仕事やSNSで済ませることが増えていく。

また、子供がいる家庭は人生のテーマのほとんどが子供になるので、他人に見栄を張ることにますます興味がなくなる。これは肌感覚としての傾向だが、中年になることで子供は小綺麗でも親は見た目に気を使わなくなる人が増えると感じる。人生の主役が自分より子供になるからだろう。

たまに中年になってもなお、承認欲求に取り憑かれた人がいるが、それはもう例外であり、普通は自分の人生との戦いに集中するので見栄の消費は消えていく。

仕事道具はむしろ欲求が高まる

その一方で「仕事道具」についてはむしろ、可処分所得が増える中年の方が若い頃よりお金をかけるし、消費欲は高まると思っている。

筆者は仕事で使う道具については、できるだけ良いものをしっかり選んで購入するようになった。たとえば昔はボールペンは100円で3本入り、みたいなできるだけ安いものを買っていたが、今はエルゴノミクスデザインでとにかく快適で、使っていて気持ちいいものを高くても買う、といったイメージだ。椅子も机もこだわって選び、そして大事に使う事が増えた。