「ストーリー、映像、テンポの良さなら『スーパーマン』。アクションシーンとヴィランなら『マン・オブ・スティール』」

「どっちもそれぞれの良さがある。スナイダーバースはDCユニバースに対するダークなアプローチだったし、『スーパーマン』は全く違う方向性で、アートスタイルや色調などが大きく異なっている」

原作回帰については、映画評論家の面々も好感触を示している。

ヴァニティ・フェアの主任評論家、リチャード・ローソンは、『マン・オブ・スティール』について、「ハリウッドが観客に重くて深刻なスーパーマン像を受け入れる”感情的なキャパシティ”があると信じていた」時代の「力みすぎて重苦い」、「決して洗練されたものではない」と辛口。

一方の新作は「真逆のアプローチ」で、「柔軟で軽やか、そして何より楽しい」。リチャード・ドナー監督(1978年版)以来、初めて“主人公にふさわしいバランス”を見出したと称賛。「コミックらしさをあえて大切にすることこそが重要。スーパーマン本来の文脈を受け入れることが、彼を正しく描く最良の方法だった。DCはもっと早く気づくべきだった」と苦言混じりの賛辞を並べた。

ニューヨークタイムズの映画評論家、アリッサ・ウィルキンソンは、「反ユダヤ主義やナチスによる抑圧、経済恐慌に苦しむ人々の絶望を痛感し、救いを求める人々の声を知る」ふたりのユダヤ人青年によって1938年に生み出されたスーパーマンは「筋金入りの反ファシスト」。その本来の姿を描くために「彼のもつイデオロギー的ルーツに立ち返る必要があった」と主張。「ガン監督のスーパーマン神話の魅力的な解釈は成功している。スーパーヒーロー映画にうんざりしていたある批評家さえも心を動かされたほど」と評価した。

スーパーヒーロー映画が飽和状態にある今、ガン監督のスーパーマンは「ヒーローもの疲れ」の「処方箋」となるのか。一部のファンは希望を見出したようでもある。小難しい議論はさておき、新スーパーマン像が心にどう響くか、劇場に足を運んで見てはいかがだろうか。