友人宅でのパーティーに招かれた際、「何を持っていこうかな?」と悩んだ経験はあるでしょう。
現代ならワインや手土産のお菓子などが定番ですが、今から約1万年前のイランの祝宴では、なんと山を越えて巨大な野生のイノシシを持ち寄っていたようです。
この驚くべき事実は、オーストラリア国立大学(ANU)の考古学チームにより明らかにされました。
舞台はイラン西部ザグロス山脈に位置する「アシアブ(Asiab)」遺跡。
まだ農耕も牧畜も始まっていなかったこの時代、なぜ人々は重くて危険なイノシシを遠方から運び、集団で祝宴を開いたのでしょうか?
研究の詳細は2025年7月3日付で科学雑誌『Communications Earth & Environment』に掲載されています。
目次
- 70キロ離れた場所からイノシシを持参していた
- 産地のイノシシで絆を深め合う?
70キロ離れた場所からイノシシを持参していた
イラン西部のアシアブ遺跡で発見されたのは、直径20メートルにも及ぶ円形の建物の内部に封じられた19頭分の野生イノシシの頭蓋骨でした。
解体の跡が残されていたことから、これらは大規模な祝宴で消費された可能性が高いと考えられています。
注目すべきは、この地域に野生イノシシが自然に生息していたにもかかわらず、わざわざ遠くからイノシシを運んできたという点です。
研究チームは今回、5頭のイノシシの歯を分析し、歯のエナメル質に含まれる酸素同位体やストロンチウム同位体比、さらにはバリウム濃度を詳細に調査。

その結果、少なくとも4頭のイノシシが遺跡から70km以上も離れた場所から持ち込まれていたことが判明したのです。
しかもそれらのイノシシは異なる季節に生まれ、異なる食生活を送っていたため、同じ群れ出身ではないことが明らかになりました。