メルツ政権の連立の土台を震撼させる出来事が起きた。夏季休日に入る直前、連邦議会で11日、憲法裁判所の3人の判事選挙が実施される予定だったが、SPDが指名した弁護士、フラウケ・ブロジウス=ゲルスドルフ氏に対して、CDU/CSU側から「同弁護士は中絶問題でリベラル過ぎる」という声が持ち上がり、判事選挙が土壇場で中止されるというハプニングが起きたのだ。

もちろん、SPD内から「連立内で決定していたことに反対することは許されない」というメルツ首相の与党への批判が上がった。ドイツ民間放送ニュース専門局NTVは「与党は憲法裁判所判事選挙で敗北し、自らの恥をさらした」と報じている。

メルツ首相は「SPDが指名したブロジウス=ゲルスドルフ氏に対するCDU会派内での抵抗が強すぎたため、新判事選挙が中止されたことは残念だが、連立を動揺させるほどのことではない。少なくとも何らかの不満があったことを事前に早く認識できたら良かったかもしれない」と述べている。

ドイツ事情通は「CDUとSPDの議会内での意思疎通がうまくいかなかったのが主因だ。その結果、連立政権内の分裂を外部に露呈することになった」と説明していた。

ちなみに、フランク=ヴァルター・シュタインマイヤー連邦大統領は「憲法裁判所判事選挙の延期により、与党連立政権は自ら損害を被った」と指摘し、憲法裁判所判事に関する決定を迅速に決定するように求めた。

最終的には、憲法裁判所の新しい判事選挙は夏季休暇明けの9月に再度、行うことになった。ブロジウス・ゲルスドルフ氏は再度立候補する意向だから、CDUとSPD内の話し合い急務となる。両党が妥協できない場合、SPD内の左派グループがCDUとの連立政権に疑問を投げかけてくることは必至だ。クリングバイル党首が党内の左派グループを説得できるか否かは不明だ。

メルツ首相は13日、ドイツ公共放送ARDとの慣例の「サマー・インタビュー」で、政権の危機という情報を否定し、SPDとの連立政権は「仕事内閣だ」と強調し、意見の相違は織り込み済みと述べて、政権運営に自信を見せた。