ある研究では、全犬の14〜29%が「分離不安」による問題行動を示すと報告されています。

これは無駄吠えや家具の破壊、脱走などの形で現れます。

さらに、十分な運動や交流がない犬は肥満、落ち込み、退屈などにも苦しむことが知られています。

こうした事情を踏まえ、ACTは「1日3時間」という具体的な時間を提示することで、飼い主に犬とのふれあいの重要性を明確に伝えようとしているのです。

しかし、この草案は一般市民の間で賛否両論を巻き起こしています。

多くの飼い主は「愛犬を大切にしたい」と考えていますが、それが数値目標として義務化されることに対しては、戸惑いの声も少なくないのです。

では具体的に、どのような声があるのでしょうか。

そしてこうした時間の義務化よりも大切なことはあるのでしょうか。

愛犬との触れ合いでは「時間より質」が大切!?

ACTの草案に対して最も多く挙がった疑問は、「そもそも、全ての人が毎日3時間も犬と過ごす時間を取れるのか?」という現実的な問題です。

共働き家庭や高齢者、子育て世代にとっては、3時間の確保は簡単ではありません。

加えて、犬の年齢や性格によっても、求められる接触のスタイルは大きく異なります。

例えば、1歳の若い犬であれば長時間の散歩や活発な遊びを喜ぶかもしれませんが、12歳のシニア犬では、静かな室内でのんびり過ごす方がストレスが少ないでしょう。

さらには、数分でも飼い主と離れることで強い不安を感じる犬もいれば、数時間ひとりで過ごすことが平気な犬もいます。

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愛犬との触れ合いで大切なのは「時間より質」!? / Credit:Canva

こうした多様性を無視して一律の「3時間」を設けることに対し、スーザン・ヘイゼル氏は「数より質」の重要性を強く訴えます。

彼女の指摘によれば、犬とのふれあいで本当に重要なのは、その犬にとって心地よく、安心できる交流であることです。

ただテレビを見ながら無関心に隣に座っているだけの3時間よりも、短くても全力で一緒に遊んだり、静かに撫でてあげる時間の方が犬の心に届くかもしれません。