●この記事のポイント ・まいばすけっと、コンビニほどの広さの小規模スーパーで、商品の価格帯がコンビニより数割ほど低い ・年間100店のペースで出店攻勢をかけていることもあり、コンビニの目と鼻の先で営業するケースも ・DX導入を進めることでレジを無人化、セントラルキッチン方式導入など徹底した店舗運営コスト低減
コンビニエンスストアほどの広さの小規模スーパーで、商品の価格帯がコンビニより数割ほど低く、かつコンビニより品揃えが豊富な「まいばすけっと」。ここ数年は首都圏を中心に年間100店のペースで出店攻勢をかけていることもあり、コンビニの目と鼻の先、もしくは隣で営業するケースも増えており、7月8日付日本経済新聞記事によれば、コンビニ最大手・セブン-イレブンにとって最大の脅威になりつつあるという。例えば「まいばすけっと」では、イオンのプライベートブランド(PB)「トップバリュ」のレトルトカレーを88円(税抜き)で買うことができる。業界関係者は「近くにあるセブンとの競争に負けて撤退したコンビニの跡地に、まいばすけっとが出店し、回り回ってセブン店舗の売上が落ちるという皮肉な現象が生じている」と指摘する。「まいばすけっと」の強さの秘密に迫る。
●目次
商品の価格を上げなくても運営できる体制を確立
イオンが主に首都圏で展開する「まいばすけっと」の店舗数は1200超であり、2030年度までに2500店舗、将来的には5000店舗にまで増やす計画を持っている。ちなみにコンビニ業界3位のローソンの店舗数は約1万4000店。「まいばすけっと」の売上のうちイオンのPB「トップバリュ」商品が占める割合は20%に上るのも特徴であり、生鮮食品や弁当・総菜類、日用品など、扱う商品カテゴリは一般的なスーパーと変わらない。
「DX導入を進めることでレジを無人化したり、スーパーでみられるバックヤードやコンビニでみられる調理コーナーを設置せずにセントラルキッチン方式を導入することにより、徹底した店舗運営コストの低減を図ることで、低価格を実現している」(小売りチェーン関係者)
「まいばすけっと」の強さの理由について、流通アナリストの中井彰人氏はいう。
「生鮮食品は集中センターで処理した後、店舗に届けて陳列するだけの形態にすることで、店舗内で加工をする人を不要にしました。徹底してコストダウンしたスーパーとして成立するようになっています。ITで管理された密集した店舗網で短時間での配送によって鮮度を落とさないことに成功したということです。
価格についていえば、コンビニどころか一般のスーパーやディスカウントストアなどよりも安くなりつつあります。スーパーでもすごい勢いで値上がりしている一方、イオンのトップバリュはそもそもナショナルブランドの商品より安い上に、価格据え置きの路線を取っているため、相対的に『まいばすけっと』の価格の低さが際立つようになっています。以前からローコスト運営のためにさまざまな実験的な取り組みをしてきたわけですが、スーパーなのに数人の店員で運営して、会計もセルフレジなので極めてローコストで運営できています。それによって商品の価格を上げなくても運営できる体制を確立し、かつ店舗数が増えて規模が大きくなったことで『規模の経済』が働いて、チェーン全体としてのコスト率が低いスーパーとして成立し始めています。
スーパーは集客のために頻繁に陳列棚に変化を加えていますが、『まいばすけっと』は効率化を優先させて品揃えを絞り込んでいます。以前であれば消費者は店の品揃えの豊富さをかなり重視していましたが、長きにわたり実質賃金が減少を続けて家計が苦しくなった結果、とにかく安いものを追い求める人の割合が増えたというのも、『まいばすけっと』にとっては追い風です」