識者らからも「米国が世界のリーダーの地位から降り、米国だけの損得勘定を考えるという。われわれは対米依存が強すぎた経済、安全保障のあり方を修正していく必要がある」と指摘があります。時代は50年か100年に一度の大転換期にきています。
メディアに載るコメントを読んでいて、絶句したことがありました。「無策が招いた高関税」(読売新聞政治部長)の解説です。「関税交渉で石破首相は無為無策だった。最大の失敗は首脳同士で突っ込んだやりとりができず、トランプ氏の真意をつかみきれなかったことだ。交渉カードもなく理屈で返した首相の対応がトランプ氏の心証を悪化させた」と。
新人記者ならともかく、政治部長がこんなよく書けました。「無策が招いた高関税」の見出しも間違いで、「乱暴、無謀な高関税」が正しい。批判すべきは石破首相でなく、トランプ氏です。
主語を取り違えてえいます。「石破首相を主語とした文章」を「トランプ氏を主語にした文章」にすれば、現状を正しく伝えることができます。まともな記者なら「トランプ氏の提案は石破氏に全く響いていなかった」、「トランプ氏の国際規範を無視した一方的な高関税は石破氏の心証を悪化させた」と書かねばなりません。石破首相をもっぱら批判するのは錯誤です。
その読売新聞は参院選立候補者へのアンケート調査の結果を11日朝刊に掲載しました。選挙選の争点を三つまで挙げてもらったところ、景気・雇用(47%)、消費税(41%)、年金・医療・介護(39%)でした。外交・安全保障は17%で10位でした。激動する国際情勢の中の日本の先行き懸念こそ重大問題です。日本の政治家の思考のスケールが小さすぎます。
トランプ氏の登場以来、世界における日本の将来、先行きをどう考えるかが喫緊の課題になってきました。それとの関連では、アンケート調査では、中国との関係強化に対し「賛成」と「どちらかといえば賛成」が計38%で、「反対」と「どちらかといえば反対」が計30%で、賛成が反対を上回りました。中国との関係改善を「媚中派のやること」と言わずに、選挙後にささかれている大連立(自公・立憲)が実現するなら、こうした大きなテーマで政策協調すべきでしょう。