音楽の快感は、アルコールや薬物と同じ脳領域で生じている可能性があるようです。
カナダ・マギル大学の神経科学研究チームは、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)とTMS(経頭蓋磁気刺激)を用いて、脳内におけるポップミュージックの影響を調査。
脳の報酬経路を刺激することで、音楽による快感やモチベーションが高まる可能性が示されました。
これは聴覚と報酬領域の間のコミュニケーションが、音楽に喜びを感じる理由であることを脳科学的に実証した初の研究となります。
研究は、2021年4月28日付けで『Journal of Neuroscience』に掲載されています。
目次
- 音楽とアルコールは同じ快感?
音楽とアルコールは同じ快感?
これまでの知見によると、音楽の報酬には、ドーパミン経路(報酬系路)の関与が必須とされています。
この経路は、中脳の「腹側被蓋野(VTA)」から始まり、重要な報酬領域の1つである「側坐核(NAc)」に至ります。
アルコールや薬物の他に、食事や性的行為によっても刺激される経路です。

一方で、この経路に音楽が関わっていることは、まだ相関的にしか示されていませんでした。
研究主任のアーネスト・マス-へレロ氏は「音楽の快感と報酬系路の間のリンクは示唆されていますが、一方が他方を引き起こすことは因果的に証明されていない」と話します。
そこでチームは、ポップミュージックを好む17人の被験者を対象に調査を開始。
被験者に音楽を聞いてもらっている間、血流の動きに合わせて変化する脳の活動をfMRIで測定しました。
スキャンの前には、「TMS(経頭蓋磁気刺激)」によって、報酬経路を間接的に刺激、あるいは抑制しています。
TMSとは、8の字型の電磁石を使って弱い電流を組織内に誘起し、脳内のニューロンを興奮させる非侵襲的な方法です。
