全体傾向は、少なくとも数年は変化しない

 国内では建設予定地周辺の住民による反対運動が相次いで起きており、建設業界全体が抱える問題として、人手不足や建設資材の高騰などの影響で着工やスケジュールの遅れ、さらには建設着工のメドが立たない事例が相次いでいる。

「仮にデータセンターの建設が予想どおりには増えないとすれば、AI自体の需要減速予測が大きな要因になるでしょう。ただし、繰り返しますが、短期的には考えづらいです。予想に比して伸びない(減速ではない)場合、立地や電力需要などの条件が考えられますが、個々の事案に依存すると考えられます。

 そもそもAIの需要減速が原因であれば、戦略自体がその前に変更されるわけで、ビジネスモデル上の変更が出てきます。AIを軸にした成長戦略以外を検討することになりますが、現状のトレンドではそれは考えづらいです。当然、半導体需要は下がるでしょうが、現状も需要を満たせていない状況なので、少々の変化では調整・吸収されてしまうでしょう。

 米NVIDIA(エヌビディア)などのHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)向け半導体に『明確な影響が出るほど』の変化だとすれば、それはデータセンター需要の減速以前に、全体戦略の見直しという大きな波が先に見えるはずです。

 ただし、AIのニーズが学習ニーズから推論ニーズに移行していくことで、求められる半導体の性質が変わる可能性はありますが、あくまで比率の問題であり、全体傾向は、少なくとも数年は変化しないと予測されます」

 AIの領域ではLLMに加えて、SLM(小規模言語モデル)やAIエージェントの開発・導入も活発化している。そしてAIの活用が進めば他の業務システムや外部システムとの連携は増大し、一方で企業によるAI以外のシステム投資は世界的にみれば大きく冷え込む気配はない。こうした状況を踏まえると、今後も当面の間はデータセンターへのニーズが高まってくると予想される。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=西田宗千佳/ITジャーナリスト)