●この記事のポイント ・マイクロソフト、一部のデータセンター建設・拡張計画を止めている ・生成AIを軸とした演算需要の急激な拡大は明確 ・データセンター需要の減速は、短期的には考えづらい

「Microsoft Azure」を手掛ける米マイクロソフトや米Amazon Web Services(アマゾン ウェブ サービス:AWS)など世界の大手クラウドサービス事業者が、データセンター建設の計画を相次いで中止・見直ししていると伝えられている。AIの開発競争の活発化や利用の広がりにより世界的にデータセンター需要が増大していくと予測されてきたが、電力・水の供給不足が新設のネックになったり、AI関連市場の成長が予想を下回ることで需要が下押しされる可能性も指摘されている。実際のところ世界ではデータセンターの建設にブレーキがかかっているのか。また、将来のデータセンター需要に大きな影響を与える変化が起きているのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

●目次

マイクロソフト、依然としてデータセンターへの投資に積極的

 マイクロソフトはアメリカや欧州で一部の建設・拡張計画を止めていると伝えられており、電力供給の制約などが要因とみられている。LLM(大規模言語モデル)の開発競争が落ち着き始めて、データセンター需要が予想されていたほど伸びないという見方も出ている。電力不足や水不足、立地エリアでの反対運動、さらには生成AIの事業化(収益化)の遅れなども需要を下押しするという見方もあるが、今後も建設ラッシュは続くと予想されるのか。

 ITジャーナリストの西田宗千佳氏はいう。

「本質的にはそこまで大きく状況が変化しているとは認識していません。マイクロソフトは指摘の地域『以外』では、いまだにデータセンターへの投資を積極的に行っています。

 また、マイクロソフト以外に大きな投資見直しの話はありません。データセンターを構築する上での課題は過去から多く、現状も大きな解決策は得られていません。一方で、生成AIを軸とした演算需要の急激な拡大は明確で、『建築せねば競争に置いていかれる』状況であるのも変わりません。アメリカにおいてはトランプ政権の方針が『AI推進』である以上、個々の事案に変更はあるでしょうが、全体としての流れに変更はありません。

 現状は過剰投資懸念よりも、AI以外も含めたクラウド事業全体の伸びの鈍化や、すでにある設備の見直しといった要因が大きいです。AI事業から見た収益性問題はあり、単純に増やすだけでは効率が見込みづらいです。特に、OpenAIとの関係見直しもあり、マイクロソフトはアセットの最適化から投資見直しを行っていると考えられますが、これを全体傾向と見るのは『まだ』難しいです」