リトル氏は、こうした連鎖的な社会崩壊を前提にすると、人類が絶滅するのは「70〜80年後になる可能性もある」と主張しています。

これは決して誇張ではありません。電気が止まり、物流が途絶え、医薬品や清潔な水が手に入らなくなれば、感染症や飢餓のリスクが急増します。

文明の恩恵を失った人類は、思いのほか脆く、短期間で滅びうるのです。

では、現実世界での出生について考えてみましょう。

現実に進行している「静かな崩壊」

世界の人口は増加傾向にありますが、そのペースは鈍化しています。

ある専門家は、2080年代には100億人に達してピークを迎えると予測しています。

では、「人類が滅亡する」なんてシナリオは、私たちに全く無縁のものでしょうか。

必ずしもそうとは言えません。

現実世界の多くの国では、出生率の低下という静かな危機が進行しています。

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多くの国では出生率が低下している / Credit:Canva

アジアの先進国、特に韓国や日本では、出生率は「人口維持に必要な水準」を大きく下回っており、韓国では世界最低水準に達しています。

こうした出生率低下の背景には、「経済的不安や雇用の不安定さ」「子育て支援制度の不足」「ワークライフバランスの難しさ」「ライフスタイルや価値観の変化」といった要素があります。

さらに近年では、男性側の不妊(たとえば精子数の減少や運動率の低下)といった生殖医療に関わる問題も顕在化しています。

WHOの推計では、不妊の原因の約半数は男性側にあるとされます。

出生率が低下し続ければ、高齢化社会はさらに深刻化し、年金制度や医療制度の持続可能性が危機に瀕します。

また、若年層の減少によって国家の競争力や創造力も衰えていくでしょう。

たとえば、新しいテクノロジーの導入や起業の活性化は、しばしば若者のアイデアや行動力によって推進されています。

「突如出産できなくなる」という架空のシナリオでは、急速かつ連鎖的な社会の崩壊が人類の滅亡を早めます。