エジプトの港湾都市アレクサンドリア。その歴史的な港の海底から、古代世界の七不思議の一つに数えられる「アレクサンドリアの大灯台」を構成していた、巨大な石のブロックが次々と引き上げられている。2000年以上もの間、地中海の底に眠っていた古代の驚異が、今、再びその姿を現そうとしているのだ。

 フランスとエジプトの共同研究チームが引き上げたのは、合計22個にもおよぶ巨大な石材。中には、重さが70トンから80トンにも達するとみられる巨大な出入り口の断片も含まれており、そのスケールの大きさに誰もが息をのむ。

海の底から蘇る“世界の七不思議”失われたアレクサンドリアの大灯台が「デジタルツイン」で復活への画像2
(画像=画像は「Live Science」より)

 このプロジェクトは、単に遺跡を引き上げるだけではない。最新のデジタル技術を駆使して、失われた大灯台の謎を解き明かし、その壮大な姿を現代に蘇らせようという、壮大な試みなのである。

古代世界を照らした「技術の結晶」

 アレクサンドリアの大灯台が建設されたのは、紀元前280年頃。マケドニアのアレクサンダー大王によって築かれ、ヘレニズム時代のプトレマイオス朝エジプトの首都として栄えた、古代世界有数の大都市アレクサンドリア。その港の入り口にそびえ立っていたのが、この灯台だ。

 その高さは100メートルを超え、当時の建造物としては世界で最も高いものの一つだった。動力も電気もない時代に、どうやってその光を遠くまで届けていたのか。古代の記述によれば、頂上で燃やした火(おそらく木材や油を燃料としていた)を、磨き上げられた巨大な金属板(青銅や銅製だったと考えられている)で反射させることで、約50km先からでも視認できる強力な光線を作り出していたという。まさに、古代の技術の粋を集めた驚異の建造物だった。

 しかし、その栄光も永遠ではなかった。度重なる地震によって徐々に損傷し、14世紀にはついに完全に倒壊。古代世界の七不思議の一つは、その姿を歴史の闇に消した。

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(画像=By Prof.Hermann Thiersch(1874–1939) – Hermann Thiersch, Public Domain,Link)