【3】JR根室本線・幾寅駅(北海道)──人より“鹿”の通勤が多い?

なぜここに駅を建てた? 幾寅駅は、かつて林業や鉱業が盛んだった時代に建設されました。 物資輸送や通勤に重要だった駅も、産業の衰退により“利用者ゼロ”の日もあるほどに。
ちなみに、映画『鉄道員(ぽっぽや)』のロケ地としても有名。駅舎はそのまま保存され、観光客が訪れる“異常に静かな名所”として注目されています。
【4】四国・祖谷のかずら橋──崖の間に浮かぶ原始の道

徳島県三好市にある「祖谷(いや)のかずら橋」は、深い渓谷の間にかかるシラクチカズラ製の吊り橋。
風に揺れ、足元の隙間から下の川が見えるスリル満点の橋ですが、地元住民は長らくこれを日常使いしていました。
なぜここに? 源平合戦に敗れた平家の落人がこの地に逃れ、追っ手から身を守るために「すぐに切り落とせる橋」を作ったのが始まり。
現在は安全性を高めて観光地化されていますが、その“逃げ道に架けられた橋”という立地は異様ともいえます。
【5】伊豆大島の「緩やかな裾野に位置する中学校」

東京都に属する伊豆大島。
活火山・三原山を抱えるこの島には、海抜 50〜90mほどの緩やかな溶岩台地や丘陵に建つ“異常立地”の中学校があります。
昭和の大噴火を経て、島民は火山活動に警戒しながらも再びこの地に戻り、教育環境も整えてきました。
再び噴火するかもしれない──そんなリスクがあるにもかかわらず、なぜ火山の裾野に学校を建てたのでしょう。
それは、限られた土地という事情と、「この場所で生きていく」という島民の覚悟があったからだといわれています。
この学校では、火山避難訓練が日常のカリキュラムに組み込まれており、非常時にはシェルターとして使える設計がなされているそうです。
火山とともにある暮らしは、どこかスリリング。それでも、子どもたちはそこからたくましさを育んでいきます。
危険と背中合わせの共存。その覚悟ある日常は、きっと訪れる人の心にも強く残ることでしょう。