しかしその主張は、ローリングストーン誌の独占インタビューによって覆されました。

バンドのスポークスパーソンであり“準メンバー”を名乗るアンドリュー・フレロン氏が「実際にはAI生成プラットフォーム『Suno』を使用していた」と認めたのです。

当初は「ブレインストーミングに使っただけ」としていたフレロン氏も、インタビューの中で徐々に発言を変化させ、「一部の楽曲はSunoによって作成された」「ボーカルの一貫性を保つためにSunoの『ペルソナ』機能を使った」と語りました。

つまりこの“話題のバンド”は、楽曲も歌声もビジュアルも、すべてAIツールによって生成された作品群だったのです。

なぜ「AI」でもヒットしたのか?

では、Velvet Sundownはなぜここまで人気を集めることができたのでしょうか?

かつてSpotifyでデータ分析を担当していたグレン・マクドナルド氏は、「Spotifyのおすすめシステムが、かつてのような“人間の傾向”ではなく、“音響的特徴”をもとに楽曲をレコメンドする仕組みに変わっている」と指摘します。

このようなシステムでは、AI生成曲であっても偶然レコメンドに乗り、爆発的に再生される現象が起こり得るというのです。

また、ベテランの音楽A&R(アーティスト・アンド・レパートリー)も次のように語っています。

「音楽が素晴らしいからじゃない。AIだから注目されたんだろう。本物に見えないものが、今は逆に新鮮なんだ。でも、やがてAIが“本当に良い曲”を生み出すようになる。そのとき、誰も“AIかどうか”なんて気にしなくなるよ」

実際、The Velvet Sundownのケースは「AIによるヒットの第一波」として記憶されるかもしれません。

一方、フレロン氏自身はこう語っています。

「人々がAI音楽に対して強く反発する気持ちは理解している。だけど、それは過剰反応でもある。