製造・金融・医療の現場から業務変革を実現
製造現場でも変革が始まっている。熟練技術者の知見を若手社員に効率的に伝えるため、PLM(製品ライフサイクル管理)システム「Obbligato」と連携し、図面や仕様書からの要点抽出と自動ナレッジ化を実現する取り組みも始まっている。「今、日本の製造業は技能伝承の危機にありますが、cotomiはベテランの暗黙知を言語化する『通訳』の役割を果たしています」と石川氏。金融機関では顧客問い合わせ対応の精度が向上し、医療現場では電子カルテシステム「MegaOak/iS」への搭載により電子カルテ情報をもとにした要約文章の生成自動化が進んだ。これにより、専門職の本来業務への集中を支援している。
今後NECが目指すのは、単なる「AIツール提供」ではなく「業務変革の伴走者」としての立ち位置だ。石川氏は「多くの企業では『AIを使う』こと自体を目的化しがちですが、本来は経営課題や業務課題の解決が目的であるべきです」と指摘する。その実現に向けて、NECは「Agentic AI」の開発に注力。複数のAIが連携して業務プロセス全体を自律的に実行する取り組みを推進している。
「日本企業の競争力向上には、日本の仕事文化や業務プロセスに根ざしたAI活用が不可欠です」と石川氏。国産生成AIの先駆者として、NECはお客さまの変革を成功へ導く価値創造モデル「BluStellar(ブルーステラ)」のもと、技術とビジネスモデル、そして人材育成を一体化させた支援を約束する。
医療・金融・製造分野での特化型モデル開発も次々と進む。生成AIがもはや一過性のブームではなく、企業の基盤技術となる時代。NECの描く「国産AI」による日本型DXの行方から、目が離せない。
(文=秋葉けんた/ITライター)