キリアン・ムバッペ(パリ・サンジェルマン所属時)写真:Getty Images

フランス代表主将のFWキリアン・ムバッペ(レアル・マドリード)が、前所属のパリ・サンジェルマン(PSG)を「モラルハラスメント(精神的嫌がらせ)」および「サイン強要未遂」で提訴し、6月26日にパリの検察局が捜査を開始したことが国際メディアで報じられた。

PSG(2018-2024)で通算308試合出場256ゴールを記録し、2024/25シーズンに契約満了によりレアル・マドリードへフリートランスファーで移籍したムバッペは、2023年に契約延長を拒否したことを理由に、プレシーズンのアジアツアーに招集されず、リーグ開幕戦のメンバーからも外された。さらに、放出候補の選手たちとともに別メニューでのトレーニングを強いられた。

ムバッペは、こうした一連の扱いが「ロフティング(ロフト)」と呼ばれるパワーハラスメントにあたるとして、2023/24シーズン末に未払いとなっている給与やボーナス約93億円(5,500万ユーロ)の支払いも含め、法的措置に踏み切っている。

ロフティングは、フランスに限った話ではなく、契約延長を拒んだ選手などに対し“見せしめ”的に主力組の全体練習から切り離し、リザーブやユースで練習させたり、酷いケースでは練習場への立ち入りを禁止する隔離行為を指す。

フランスの裁判所が、ロフティングがモラハラ・パワハラにあたり違法という判決を出すことがあれば、サッカー界にどういった影響があるのだろうか。


メスト・エジル 写真:Getty Images

契約を有利に進めるために長く用いられてきたロフティング

ロフティングの慣行は、選手に退団や契約延長を強いる圧力として機能することが多く、精神的なストレスやキャリアへの悪影響を及ぼすとして問題視されてきた。こうした事象はプレミアリーグ、ラ・リーガといった欧州リーグや、南米などでも見られる。