このモデルは、安倍内閣時代に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)によって実際に導入され、株価の変動に伴い成果も上下した。現時点では株高に支えられ、「成功」と見なされている。中には、その評価益を調子に乗って一般財源に取り込もうとする不届きな主張すらある。

ただし、このような仕組みを恒常的な財政拡大の原資と位置づける発想には強い懸念がある。年金と一般財政の両方がこの方式に依存すれば、資産総額そのものがリスク要因となる。

とはいえ、仮にファンド運営が健全かつ非政治的に行われるのであれば、それなりに高い確率で一定の成果を上げる可能性はある。家計においても、預金・株・不動産に三分割する発想のもとで、多少リスクを取っても利回りの高い運用を行うことは妥当である。米国債の比率をやや減らし、米国政府が評価する他の金融資産に振り向ける選択も考えられる。

特に、ゴールドマン・サックスの役員経験を持ち、日本の政治家で唯一、政界入り前にトランプ大統領と対峙した経験を有する岡本氏のような実績ある人物が主導し、人脈を活かして有能なマネージャーを発掘し、政治的介入から独立した人事と運用体制を確保するのであれば、成功の可能性は高まるであろう。

問題は、これが政治主導で運用先を決定されるようになると、旧来の放漫な財政投融資の二の舞となるリスクがある点である。かつて郵貯資金などを原資とした投融資が政治的に歪められた苦い歴史を忘れてはならない。

諸外国には、ノルウェーのように天然資源を原資としたSWFもあれば、フランスのように純粋な投資型ファンドとして慎重に規模を限定した事例も存在する。したがって、誰も試したことがない手法というわけではない。日本においても、適切に制度設計を行えば、一定程度は導入を検討してよい選択肢だと考える。