前述した3つの原則は、確かに効果があります。

2024年、アメリカのEEG検査センターでは、予約をキャンセルする患者に対しては、「この検査がどれだけ重要か」を説得する方針が取られていました。

しかし、キャンセル率は一向に改善しませんでした。

そこでスタッフたちは「キャンセルの裏には患者の葛藤がある」と理解し、3つの原則を当てはめることにしました。

「どう感じているか」を聞き、不安や迷いを言語化・理解し、決定権を患者に委ねる という対応を徹底したのです。

その結果、同日のキャンセル率が最大で50%も減少しました。

しかも、通話時間は長くならなかったというのですから、これは驚くべき結果です。

さらに重要なのは、キャンセルした患者でも、その多くが後日「再予約」したという点です。

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日常生活で応用してみよう / Credit:Canva

私たちも、やる気を引き出すための「対話の3原則」を日常に応用できます。

例えば、子どもが宿題を後回しにしているときには、「今日は何が一番気になってるの?」と尋ねることから始められます。

同僚が仕事を後回しにしているときには、「やるべきことが多くて、どれから手をつけたらいいか迷うよね」と理解してあげられます。

このように、“理解する姿勢”を見せることで、相手の内側から変化が生まれる土壌が整うのです。

やる気を引き出す方法は、「指摘」でも「説得」でも「正論」でもありません。

相手の心の中にある「迷い」と向き合い、“聞き手”に徹することで、初めて本当のモチベーションが育ち始めます。

これは誰かのためでもありますが、自分自身がイライラしたり、無力感に悩まされたりしないためにも重要なスキルです。

次に誰かの「やる気がない」場面に遭遇したなら、ぜひ試してみてください。

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参考文献

Why Trying Harder to Motivate People Doesn’t Work
https://www.psychologytoday.com/us/blog/live-better/202506/why-trying-harder-to-motivate-people-doesnt-work