ホラー映画『ファイナル・デスティネーション』シリーズ。その根底にあるのは、「死の運命からは決して逃れられない」という、一つの恐ろしいアイデアだ。映画では、ありえないほど手の込んだ奇妙な事故が次々と描かれる。だが、私たちがこのシリーズに惹きつけられるのは、日常に潜むありふれたモノが、突如として牙をむくかもしれないという根源的な恐怖を刺激されるからだろう。

 映画の中の奇想天外な事故は、もちろんフィクションだ。そう思うことで私たちは安心する。しかし、現実は時に映画をはるかに凌駕するほど衝撃的で恐ろしい。

 これから紹介するのは、そんな「まさか」が現実になってしまった10の物語。今回はその【前編】として、5つの事例をお届けする。

1. 食器洗い機に潜む、見えない刃

最強の磁石、回転床… 現実に起きた『ファイナル・デスティネーション』級の悲劇【前編】の画像2
(画像=Image bybeauty_of_naturefromPixabay)

 2003年5月、スコットランド。31歳のジェーン・マクドナルドさんは、友人の家のキッチンで忙しく立ち働いていた。その時、開け放たれていた食器洗い機のドアが彼女の運命を暗転させる。彼女は不運にも足を滑らせ、食洗機の中に転倒してしまったのだ。

 もしそれだけなら、彼女は助かっていたかもしれない。しかし、食洗機の中には刃を上にして立てられたナイフがあった。彼女はその刃の上に倒れ込んでしまったのである。

 この悲劇はこれが初めてではなかった。6年前、12歳のマーク・ロッキングハム君もまた、自宅で食器洗い機をまたごうとしてバランスを崩し、中にあったナイフで胸を貫かれて命を落としていた。日常の何気ない風景が一瞬にして死の罠と化した瞬間だった。

2. 最強の磁石が命を奪う凶器に

最強の磁石、回転床… 現実に起きた『ファイナル・デスティネーション』級の悲劇【前編】の画像3
(画像=Image byMichal JarmolukfromPixabay)

 2001年7月、ニューヨーク。6歳のマイケル・コロンビニ君は、自宅で転倒し病院に運ばれた。幸い怪我は軽かったが、検査の結果、脳に良性の腫瘍が見つかった。手術は無事に成功し誰もが安堵した。

 その1週間後、経過観察のためにMRI検査が行われることになった。鎮静剤で眠っているマイケル君がまだ装置の中にいる時、一人の看護師が金属製の酸素ボンベを室内に持ち込んでしまった。

 次の瞬間、悲劇が起きる。MRIが放つ超強力な磁場が、その酸素ボンベを凄まじい力で吸い寄せたのだ。弾丸のように飛んだボンベは装置の中にいたマイケル君の頭部を直撃。彼は頭蓋骨を粉砕する重傷を負い、その2日後に息を引き取った。病を克服した矢先に、治療のための機械が彼の命を奪う凶器となってしまった。