回転寿司チェーン各社の方向性

 回転寿司チェーンで多角化を進めるのは「くら寿司」だけではない。スシローを運営するFOOD & LIFE COMPANIESは大衆寿司居酒屋「杉玉」やテイクアウト店「京樽」を展開。一方、「はま寿司」を運営するゼンショーホールディングス(HD)は牛丼店「すき家」やファミリーレストラン「ココス」を展開する総合外食企業だが、今のところ寿司店業態は「はま寿司」のみであり、国内での店舗数拡大に注力しているとみられる。

 回転寿司業界の勢力図をみてみると、25年3月当時の国内店舗数ベースで1位はスシロー(650店舗)、2位は「はま寿司」(639店舗)、3位は「くら寿司」(549店舗)。各社とも業績は好調で高い集客力を誇っているが、その戦略には大きな差があるという。

 外食・フードデリバリーコンサルタントの堀部太一氏はいう。

「まず、スシローは海外事業を拡大しており、売上高に占める海外比率を40%にすべく中国・北米・インドネシアに事業を展開。海外調達・海外加工による流通の良さから海外でも高い収益力を維持しています。国内の活性化策としては省人化とデジロー導入で単価をアップさせています。調達も強化しており、水産資源活用に向けて養殖やフードテックに投資しています。

 はま寿司は国内回転寿司市場における売上・店舗数No.1を目標に掲げ、そのための投資が進んでいます。一方で海外展開は主にアジアで進んでいますが、回転寿司に限らず現地の寿司チェーンのM&Aも進めています。

 くら寿司は足元では国内事業が好調であり、インバウンド特化の旗艦店モデル(6店舗)を展開。価格の見直しも行っています。海外展開としては北米での出店を加速させており、今後の出店は海外店舗比率が高いです」

 各チェーンのメニュー・価格戦略に差はあるのか。

「スシローはあくまでも『寿司』を強化して適正価格化が進んでおり、下限130円ながら幅広い価格帯になっています。集客商品もご馳走メニューのコスパ感と、あくまでも寿司としての打ち出しが強いです。はま寿司は110円のアイテム数が多く、引き続きお値打ち感を訴求しています。また、最近では麺メニューや唐揚げメニューなどサイドメニューが豊富で、安さ×ファミレス要素での集客が強いです。

 くら寿司は低価格を維持していますが、既存店客数がやや不調で、そのため集客のためのコラボ(にじさんじ、ごぶごぶ、名探偵コナン、ミャクミャク)、客層を広げるためのプレゼントシステムなど、寿司以外の切り口での施策が続いています」

 では、今後どのチェーンの戦略がよりうまくいくと予想できるか。

「海外では出店時のブランド力だけでなく、流通力でも差が出てきます。その視点で見ると、回転寿司に特化した流通システムをつくったスシローが強いです。はま寿司は海外においてもゼンショーのMMDシステムの活用を最大限活かせるのかが注目されます」

(文=Business Journal編集部、協力=堀部太一/外食・フードデリバリーコンサルタント)