また、哺乳類の中では、シカ死体の実に40.9%をタヌキが最初に発見しており、その発見時間の平均は3.3日でした。

この他にも、哺乳類ではツキノワグマやイノシシ、キツネ、テン、ハクビシンが、鳥類ではクマタカ、トビ、カラスが死肉を食べにやってきています。

シカの死体が消失するまで何日かかる?

加えて、哺乳類によるシカの発見には気温が大きく関わっており、気温が高いほど発見時間は短くなっていました。

これは腐敗が早く進んで、臭いが広がるために、嗅覚の鋭い哺乳類が死体を発見しやすくなっているからと考えられます。

それから、シカの死体の消失時間は平均して7日でした。

これを世界各国の先行研究と比較してみると、26事例中18番目、さらに森林地域に限定すると15事例中8番目の消失速度でした。

ハゲワシのような死肉食に特化したスカベンジャーがいないことを踏まえると非常に早く、日本の森林は、健全な生態系を維持するのに十分な死体除去の能力を持っているといえます。

また、消失時間も気温が高いほど短くなることが判明しました。

この結果は、気温が高いほど変温動物である昆虫(とくにウジ虫)が活発になることで、死体の分解スピードも上がっていることを示唆します。

シカ死体の消失時間と気温、およびシカ体重の関係性を予測した図
シカ死体の消失時間と気温、およびシカ体重の関係性を予測した図 / Credit: 東京農工大学 – 森の中のシカ死体、だれが最初に見つけて食べている?~動物によるシカ死体の発見と消失のパターンを解明~(2022)

今回の研究は、専門的なスカベンジャーがいない日本の森林でも、哺乳類を中心に効率的な動物死体の処理・分解が行われ、健全な生態系が維持されていることが明らかになりました。

しかし一方で、本研究は、死体処理に大きく寄与しているはずの無脊椎動物(おもに昆虫)の影響が考慮されていません。

チームは今後、無脊椎動物による死体処理の定量化を進めるとともに、死肉消費をめぐる脊椎動物と無脊椎動物の関係性も明らかにしていきたいと考えています。