森で死んだものの遺体を、自然はどのように処理しているのでしょうか?
東京農工大学大学院、米イリノイ大学(University of Illinois)の共同研究チームは2022年に、森林内にニホンジカの死体を設置し、どのスカベンジャー(死肉食動物)が、どれくらいの時間で発見できるか、また、死体が消失するまでにどの程度かかるかを調査。
その結果、最初に死体を発見するのは哺乳類で、特に、タヌキが最も早くシカを見つけることが明らかになりました。
嗅覚に優れた哺乳類は、死体をすばやく発見、分解することで、有害な病原菌の発生から日本の森林生態系を守っているようです。
研究の詳細は、2022年9月30日付で科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されました。
目次
- 死体発見のナンバーワンは?
- シカの死体が消失するまで何日かかる?
死体発見のナンバーワンは?
死肉を食べ漁るスカベンジャーは、一見すると不気味に見えますが、病原菌の発生源となる死体を迅速に除去することで、生態系を守る重要な役割があります。
中でも、死肉食に特化したハゲワシは、死体の発見と消費能力に非常に長けた動物です。
また、彼らが死体めがけて上空を飛ぶことで、それを見た地上のスカベンジャーたちが死体の在り処を見つけやすくなっています。
一方で、日本の生態系にはハゲワシがいない上、機会があれば死体も食べる程度のスカベンジャーしかおらず、死肉食に特化した種がいません。
そのため、死体がどのような動物によって発見・消費され、どの程度の時間で消失するのか、よくわかっていませんでした。
そこで研究チームは、6月〜11月にかけて、日本の森林生態系にシカの死体44頭を設置し、自動撮影カメラを用いて、死体の発見〜消失までを観察。
その結果、設置した死体の88.6%が哺乳類によって最初に発見されていたことがわかりました。
