この現象は「スプライト(Sprite)」と呼ばれ、強力な雷雲のはるか上空でごく短時間だけ発生する発光現象の一種です。
スプライトの中でも、今回観測されたような赤色に輝くタイプは「レッドスプライト」と呼ばれ、特に稀少で美しいことで知られています。
レッドスプライトはあまりに短命で、地上から目にすることはほとんどありません。
そのため、宇宙からの鮮明な写真は、科学者たちにとって非常に貴重な観測データとなります。
スプライトは「超高層雷放電(TLE)」の一種
スプライトは、通常の雷とはまったく異なる場所で起きる、いわば「空の高層での放電現象」です。
専門的には「超高層雷放電(TLE:Transient Luminous Event)」と呼ばれる現象の一種で、雷雲のはるか上空にある中間圏(高度約50〜90キロ)で発生します。
この現象は、雷雲で起きた強力な落雷がきっかけで生じることが多く、その影響が空高くまで伝わることで、大気の薄い領域が一瞬だけ発光するのです。

レッドスプライトはその中でも代表的なもので、赤く枝分かれした形や、ニンジンのような形に見えることがあります。
持続時間はわずか数ミリ秒〜数十ミリ秒で、まばたきをしている間に消えてしまうほどの速さです。
この現象は1989年に初めて撮影されるまでは、パイロットなど一部の目撃談しかなく、長い間“都市伝説”のような存在でした。
しかしその後、宇宙や高高度からの観測技術が進んだことで、スプライトの実在と多様性が明らかになりつつあります。
他にも、「ブルージェット」「エルブス」といったさまざまなTLEが存在しており(上図を参照)、現在もその仕組みは完全には解明されていません。
私たちの頭上には、普段見えていない不思議な現象がたくさん隠れています。
ISSのような宇宙からの視点は、これまで地上では捉えられなかった自然の神秘を明らかにしつつあります。