「常識」は、時と共に移り変わっていくもの。ある世代の常識が、別の世代の「非常識」となるケースは決して珍しくない。
現在X上では、十円硬貨をめぐるジェネレーションギャップに「もうそんな時代か…」と、驚きの声が続出しているのをご存知だろうか。
■十円硬貨に抱いた違和感、その正体は…
ことの発端は、Xユーザー・幕マクさんが投稿した1件のポスト。
「横に縦縞模様(?)の十円玉とか初めて見たわ」と綴られた投稿には、1枚の十円硬貨が写った写真が添えられている。本文を読むに、まるで偽金(贋金)でも発見したような印象を受けるが…。
なんと、写真に写っていたのは「ギザ10」の愛称でお馴染みの、ギザ付き十円硬貨であった。
■「ギザ10知らない世代がいるのか…」
こちらの投稿によるジェネレーションギャップは人々に衝撃を与え、Xユーザーからは「ギザ10を知らない世代がいるのか…」「ギザ10知らないってマジ?」「もうそんな時代なのか…」「ギザ10、懐かしすぎる」など、驚きの声が続出していた。
ギザ10の存在そのものが元々レアであったのに加え、現在はキャッシュレスが主流な時代。かつ、極端に摩耗・変形・変色した硬貨は再使用不可能な「流通不便貨」として、一定量が溜まると製造元の造幣局に回収される。そのため当然ながら、時が経てば経つほど希少な存在となっていくのだ。
令和の現代において、知らない世代がいるのも無理はない話だろう。
19歳のポスト投稿主・幕マクさんは、ギザ10を発見した際の心境について「(ギザが付いているので)五十円玉か、百円玉かと思いました」と、振り返っていた。
ところで読者諸君は、そもそもギザ10の「ギザ」は、何のために付いているかご存知だろうか。
■社会の動乱を受け、ギザ10爆誕
今回はギザ10の詳細をめぐり、日本の貨幣を製造する独立行政法人「造幣局」に詳しい話を聞いてみることに。
ギザ10の製造開始時期は、今から74年も前の1951年(昭和26年)。発行の経緯について、造幣局の担当者は「元々10円貨幣は洋銀(銅、亜鉛、ニッケル)素材を用いることとして、1950年(昭和25年)3月に臨時貨幣法(法律第3号)を改正、同月に10円洋銀貨幣の形式に関する件(政令第26号)が公布されて製造を開始しましたが、朝鮮戦争に伴う影響を受けました」と、説明する。
当時、ニッケルが軍需資材として需要を増し、51年5月に「ニッケル等使用制限規則」(通産省令第35号)が制定され、8%以上のニッケルを含む洋銀の使用も制限されるようになったのだ。
こうした社会情勢を踏まえ、造幣局の担当者は「51年8月をもって製造を打ち切ることとなり、1枚も発行されませんでした。その後、10円青銅(銅、亜鉛、すず)貨幣の形式が同年12月に制定(政令372号)され、ギザのある10円青銅貨幣の製造を開始しました」と、その歴史を説明してくれた。
正に「昭和の動乱」を感じさせるエピソードである。