では、近年一般化しているオンライン上のコミュニケーションにおいて、自己開示をどのように促せるでしょうか?

研究チームは、この点を明らかにするため、VRアバターを用いた比較実験を行いました。

自分に似ていないVRアバターは「ありのままの自分」をさらけ出すのに効果的

3つのコミュニケーションツール
3つのコミュニケーションツール / Credit:市野 順子(東京都市大学)ら_オンラインコミュニケーションツールを比較し、自己開示の効果を検証(2022)

実験には、54ペア(108人)が参加し、以下のコミュニケーションツールのうち1つを用いて対話してもらいました。

  1. ビデオチャット
  2. 外見がユーザーと似ているVRアバター
  3. 外見がユーザーと似ていないVRアバター

そして自己開示に関係するスコアを測定し、コミュニケーションツールの違いでどのような差が生じるかを調査。

その結果、自己開示に関係する3つのスコア(情報、思考、感情)において、似てないVRアバター、似ているVRアバター、ビデオチャットの順に自己開示が促されると判明したのです。

自己開示のスコアと音声の大きさの変動
自己開示のスコアと音声の大きさの変動 / Credit:市野 順子(東京都市大学)ら_オンラインコミュニケーションツールを比較し、自己開示の効果を検証(2022)

また感情と関係している「音声の大きさ」でも、おおむね同じ結果が得られました。

つまり、ビデオチャットで現実の自分たちが見えているよりも、全く関係のないアバターが見えている方が、素の自分をさらけ出しやすかったのです。

さらに2つのVRアバターは、「互いに自己開示する」のを促しましたが、ビデオチャットではその効果が得られなかったとのこと。

このことは、VRアバターが、友達や同僚、恋人といった「互いに自分のことを語り合える関係」を深めるのに役立つことを示唆しています。

加えて興味深いのは、参加者自身はコミュニケーションツールの違いによる変化を感じなかった、という点です。