●この記事のポイント ・7月25日に開業予定の「ジャングリア沖縄」、一大テーマパークが誕生するとして大きな注目 ・企画を手掛ける株式会社 刀が赤字との報道、代表はUSJ復活の立役者である森岡毅氏 ・未上場の規模の小さな企業が大きな投資に伴い一時的に赤字を計上することは珍しいことではない

 7月25日に開業予定の大型テーマパーク「ジャングリア沖縄」。沖縄県北部の名護市と今帰仁村にまたがるかたちで、東京ディズニーランドを上回る約60万平方メートルの敷地面積を擁する一大テーマパークが誕生するとして、大きな注目を集めている。その企画を手掛けたのが、運営会社ジャパンエンターテイメントの筆頭株主である株式会社 刀の代表取締役CEOであり、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)復活の立役者として知られているマーケター・森岡毅氏だ。その刀をめぐる報道が今、議論を呼んでいる。ニュースサイト「NewsPicks」は6月30日、『【森岡毅】最強マーケターは、大赤字を叩き出していた』と題する動画を配信。刀が過去に企画支援に携わった「西武園ゆうえんち」(運営元:西武ホールディングス)で減損が発生したり、ブランド再構築を支援した丸亀製麺などを運営するトリドールHDとの間で紛争が発生したりし、自社で手掛ける東京・お台場の「イマーシブ・フォート東京」の不振の影響で24億円の最終赤字(2024年度)となっていると報じられた。だが専門家は「イマーシブ・フォート東京が開業した24年に大きな赤字を計上するというのは当然」と指摘する。また金融機関ファンドマネージャーは「未上場企業の赤字が悪いという風潮が強まれば、新しいことに挑戦するスタートアップが出てこなくなる」という。

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ジャングリア沖縄に国も期待

 森岡氏は米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の日本法人などを経て2010年にUSJ運営会社のユー・エス・ジェイに入社し、映画『ハリー・ポッター』エリアの開発を成功させるなどしてUSJの来場者増加と再建を主導。17年に同社執行役員を退任し、同年に刀を創業。これまで「西武園ゆうえんち」リニューアルの支援やトリドールHDのブランド再構築を手掛け、24年には東京・お台場の「ヴィーナスフォート」跡地にテーマパーク「イマーシブ・フォート東京」を自社の資金で開業した。

 その同社が現在力を入れるのが、ジャングリア沖縄だ。運営元のジャパンエンターテイメントは2018年に設立され、開業に向けて7年もの歳月をかけて準備を進めてきたが、その筆頭株主でテーマパークの企画を担うのが刀だ。22年には政府系投資ファンド・クールジャパン機構から80億円の出資を受けており、1月に開かれたジャングリア沖縄の記者会見には石破茂首相も出席するなど、国からも大きな期待を寄せられている様子がうかがえる。

 元ボストンコンサルティンググループ・経営コンサルタントで百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏は次のように説明する。

「私もテーマパーク関連のコンサル案件を担当した経験がありますが、西武園ゆうえんちとトリドールHDのコンサル案件と、自社で手掛けるイマーシブ・フォート東京の件は分けて考える必要があります。

 あくまで報道の内容が正しいと仮定してのお話となりますが、一般論として、USJで成功した後に2件の案件でうまくいかないというのは、コンサルの世界では普通に起こり得ることです。一方、テーマパーク事業というのは初期投資が非常に大きいという特徴があるため、自社で手掛けるイマーシブ・フォート東京が開業した24年に大きな赤字を計上するというのは当然であり、普通のことであるといえます。

 ちなみに大手コンサル会社が手掛けるプロジェクトでも、うまくいかないケースというのは珍しいことではなく、原因としては『コンサル会社の提案自体が間違っていた』『クライアント側がコンサル会社の提案内容の一部だけを切り取って実行した』『そもそもコンサル会社の提案が実行されなかった』といったことがあげられます」

 ジャングリア沖縄の先行きを不安視する見方もある。

「開業前の段階で評価についてどうこういうのは野暮な話であり、開業後、時間がたってからではないと評価はできないでしょう。一ついえることは、アジアの富裕層もターゲットにして、冬の時期も楽しめるテーマパークというのは非常に起業家意識に富んだ取り組みであり、注目すべき事業であるということです」