しかし、華厳里はそのままにしておきたい――。
そこで採用されたのが、「ロボットで街区ごと建物を一時的に移動させ、再開発後に元の位置に戻す」という画期的な方法だったのです。
432台のロボットが街区ごと“歩かせる”ことに成功
このプロジェクトは2023年後半に始まっており、既に華厳里を西に約48m、北に約46m移動させています。
そして2025年5月19日、華厳里を元に戻すプロジェクトが始まりました。

総面積4030平方メートル、重さ7500トンにも及ぶ3棟の建物はそれぞれ、432台のクローラー式移動ロボットによって持ち上げられ、移動を開始しました。
これらのロボットはジャッキアップ機能と方向制御を備えており、建物を傷つけることなく、1日あたり平均10メートルのペースで“歩かせる”ように移動させていきます。
移動ルートの設計には、3Dスキャン技術とBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)が活用され、地中構造物との干渉を徹底的に回避。
また、自動で動く掘削ロボットやベルトコンベアなどが使われ、全体としてはまるで“動く工場”のような姿になっています。
これらのロボットはおよそ3週間かけて華厳里を元の位置に戻す作業を続けました。
そして2025年6月7日、ついに華厳里は元の位置に戻り、プロジェクトは見事に完了しました。

このプロジェクトのメリットは明らかです。
歴史的建築を一切壊すことなく地下の再開発が可能となり、都市の景観や文化的アイデンティティが保持できるのです。
一方で、懸念点がないわけではありません。