2040年ベースライン:△4円 2040年水素系燃料:+8円

となる。つまり、今後、原子力の再稼働などにより、「ベースライン」では電気料金は4円安くなると見通されているのに、脱炭素のコストにより「水素系燃料シナリオ」では電気料金は逆に8円も高くなる。その差は12円/kWh(2024年価格)にも上る、ということになる

これを図1の電気料金実績(2020年に家庭用26円、産業用18円)に足すと、このモデルがどのような電気料金予測をしているかを計算できる(表2、図3)。なお図3では「ベースライン」を「なりゆき」、「水素系燃料シナリオ」を「脱炭素」と言い換えている。

表2 電気料金の見通し

2020年 2040年 2040年

ベースライン 水素系燃料

家庭用 26 21 36

産業用 18 13 28

図3 電気料金の見通し

図3を解釈すると、産業用電気料金は、2020円に18円であったが、これは今後原子力発電の再稼働などによって2040年には13円まで下がる。しかし、脱炭素政策を実施すると、これが28円まで跳ね上がることになる。

同様に、家庭用電気料金は、2020円に26円であったが、これは今後原子力発電の再稼働などによって2040年には21円まで下がる。しかし、脱炭素政策を実施すると、これが36円まで跳ね上がることになる。

図3の「2040年脱炭素」の場合の電気料金(産業用28円、家庭用36円)は、2022年の価格高騰時(産業用28円、家庭用34円)と、偶然だが、とても近い。

つまり、この試算に基づけば脱炭素政策はウクライナ戦争時の電気料金暴騰の再来になるということである。

ウクライナ戦争時以来、日本政府は、電気料金を下げるために累計12兆円もの補助金をばらまいている。その一方で、このような電気料金高騰をもたらす政策を本当に実施するのであろうか?

なお、このモデルの試算は、脱炭素技術の技術開発もその実装も、極めて順調に進むことが想定されている(筆者は現実離れした想定であると思う)。従って、これでも脱炭素による電気料金上昇については、かなり低めの見積もりになっている。