つまり、このロボットは「磁石で鼻の奥の病巣に誘導され、可視光でスイッチが入る」という仕組みで、副鼻腔の奥深くまでアプローチできるようになっています。

では、実際にどのように副鼻腔炎を治療するのでしょうか。

マイクロボットが副鼻腔炎を治療!実験では細菌濃度が90%から1%へ

このマイクロボットが実際にどのように副鼻腔炎を治療するのかを見てみましょう。

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膿の粘度を下げ、細菌を撃退できる / Credit:CUHK

まず、可視光を照射されるとマイクロボットは熱を発し、周囲の膿の粘度を下げます。

これにより、通常はドロドロで浸透しにくい膿が液状化し、マイクロボットたちがバイオフィルムの内部まで入り込めるようになります。

れにより、マイクロボットの浸透力が照射前と比較して3倍以上に向上します。

次にマイクロボットは活性酸素種(ROS)を大量に生成。

バイオフィルムを構成する細菌の細胞膜を破壊し、膜自体を分解してしまいます。

この治療法は、ウサギの副鼻腔炎モデルで検証されました。

実験では、チューブを使ってマイクロボットをチ副鼻腔に送り込み、光を照射。

その結果、バイオフィルム内の細菌濃度が約90%から1%未満にまで減少しました。

さらに、炎症や繊維化(組織が線維成分に置き換わり硬くなること)が改善され、健康な粘膜組織が再生されていたことも確認されています。

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マイクロボットが行う新治療 / Credit:Canva

気になる安全性ですが、20分間の光照射後でも健康な粘膜細胞の生存率は90%以上と非常に高く、細胞へのダメージは最小限に抑えられていました。

一部の細胞が死滅している事実もありますが、これは粘膜組織の自然な再生能力と比較して容認可能なレベルだと考えられます。

また抗生物質の全身投与や副鼻腔穿刺のような侵襲的処置と比較して、患部のみに作用し周辺組織への負担が少ないという利点もあるでしょう。