しかし、イカの仲間はその身体能力からして、もっと早くから生態系に存在していたはずです。
ではなぜ、見つからなかったのか?
その謎を解く鍵となったのが、今回登場したデジタル化石マイニング技術でした。
新技術で「白亜紀のイカ」を大量発見!
この画期的な研究を主導したのは、北海道大学とドイツ・ルール大学の国際研究チームです。
彼らが用いたのは「破壊型トモグラフィー」と呼ばれる最先端の手法です。
これはデジタル上で岩石をμm(マイクロメートル)単位で削りながら、その表面を高精細・フルカラーで撮影し、断面画像を1枚ずつ蓄積していくもの。
こうして岩石全体の構造をTB(テラバイト)スケールのデータに変換し、内部の化石を“まるごと”取り出せるのです。
実際のイメージがこちら。音声はありません。
しかもこの手法で得られる情報量は、従来の産業用CTスキャンの16億倍。
化石の発見確率は1万倍に跳ね上がり、もはや“化石は運次第”という時代は終わりを迎えつつあります。
この技術を使って調査したのは、北海道の白亜紀後期の地層から採取された岩石です。
チームはこの中から計1,000個の頭足類のクチバシ化石を発見し、そのうち263個がイカ類と判明。
これらはわずか数ミリという微小なサイズであり、従来の方法では見落とされていたことが明らかになりました。
さらに驚くべきことに、これらの化石は5科23属40種に分類され、そのうち39種が新種だったのです。
しかも現代のイカに近い2グループ(開眼目・閉眼目)に属するものも多く含まれ、特に閉眼目の一部は現生種と極めて近縁でした。
また、これらのイカ化石は、アンモナイトや魚類と同じ岩石中に共存しており、体サイズや個体数の比較から、当時の海でイカが最大の生物量を持つ遊泳性動物だった可能性も浮上しています。
つまり、これまでアンモナイトが支配していたとされる白亜紀の海は、実際にはイカだらけだったと考えられるのです。
