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「なぜうちの部署だけ目標未達成なんだ」

営業会議でそう詰められたA課の田中課長。売上目標2億円に対して、半期での達成率はわずか40%。一方、隣のB課は目標1億円に対して60%を達成している。

「言い訳は聞きたくない。数字がすべてだ」

上司の言葉に、会議室の空気が凍りついた。しかし田中課長は、このまま引き下がるわけにはいかなかった。

生産性を考慮してみよう

その夜、田中課長はオフィスに残って両課の数字を詳しく分析した。

A課は10名のスタッフで8000万円の売上。つまり1人あたり800万円。一方のB課は5名で6000万円なので、1人あたり1200万円。1.5倍もの開きがある。しかし、これだけでは上司を説得できない。

さらに深く調べると、重要な事実が浮かび上がった。A課が担当する新規開拓案件の平均受注期間は6ヶ月。一方、B課の既存顧客案件は2ヶ月。つまり、A課の数字は来期以降に大きく跳ね上がる可能性が高い。実際、パイプラインを見ると、1.5億円相当の案件が最終段階にあった。

翌週の会議で、田中課長は準備した資料を広げた。

「確かに現時点の達成率は低いです。しかし、パイプラインの案件が順調に進めば、通期では目標を超える見込みです。さらに、獲得した新規顧客は来期以降も継続的な売上をもたらします」

上司は眉をひそめた。「それは希望的観測では?」

「いえ、過去3年のデータを分析しました。新規顧客の2年目の平均購買額は初年度の1.8倍です。つまり、今期の新規開拓は来期に3.6億円の売上基盤を作っていることになります」

会議室に沈黙が流れた。上司も、この数字には反論できなかった。

明日から使える、数字活用のコツ

結局、A課の予算削減は見送られ、むしろB課との連携強化が決まった。この経験から田中課長が学んだことは多い。

数字で窮地を脱するには、相手が見ていない視点を見つけることだ。今回は「時間軸」という視点だった。短期の結果だけでなく、中長期的な価値を数値化することで、新たな説得材料が生まれる。