「スペインは唯一、GDP比2%にとどめようとしている国だ。しかもスペイン経済は好調なのに、少し自分勝手に動いている。私はそれを許すわけにはいかない」

加えて、「スペインと交渉し、関税を2倍に引き上げることで合意させる意向だ」と語り、国防費の増額に応じないならば、関税によって埋め合わせるという考えを明確に示した(6月25日付「OKディアリオ」より引用)。

トランプ大統領からのこのような「脅迫」もあり、サンチェス首相は最終的に5%の国防費増額覚書に署名した。

しかしその後の記者会見では、署名した文書には例外規定があるかのような含みを持たせ、改めて2.1%への増額方針を主張した。これにはイタリアのメローニ首相も驚き、「32カ国が署名した覚書に例外は存在しない」と強く反論した。

罰を受けているかのうように右端に一人立たされているサンチェス首相

2029年、トランプ退任前に進捗確認

サンチェス首相は、おそらく今回の署名について、自らが内容を履行する必要はないと考えているのだろう。次の総選挙では自身が勝てないことを自覚しており、その責任は次期政権が負うと踏んでいる可能性が高い。

なお、この増額計画については2029年に見直しが予定されており、それはトランプ大統領が退任する直前、つまり2029年1月末までに確認が行われる見通しである。

今回のNATO首脳会議は、全体としてトランプ大統領の意向に沿って国防費増額が決定されたように見える。達成できるか否かは二の次であり、増額方針の「政治的合意」が最優先された会議だったと言えるだろう。