『オッペンハイマー』はアカデミー賞で作品賞を含む7部門を受賞し、世界的に高い評価を受けた。一方で、原爆の被害を明示的に描かなかったことについては、当時から一部で批判の声もあがっていた。
映画監督スパイク・リーは、ワシントン・ポスト紙の取材で「3時間もある映画なら、私なら日本の人々に何が起きたのか、少し時間を割いたと思う。人々は蒸発し、今も放射能の影響で苦しんでいる。彼(ノーラン)にはそれを描く権限があったはずだ」と語っている。
一方、ノーラン監督自身は、2023年の『エンターテインメント・ウィークリー』誌の取材に対し、自身の作品は、あくまでオッペンハイマーの視点からの「主観的」な物語であり、観客が見る世界も彼と同じように限定されていると説明している。
「オッペンハイマーもまた、世界と同じタイミングで事実を知った人物だ。自分の行いの予期せぬ結果について、だんだんと認識を深める姿を描きたかった。何を描くかと同じくらい、何を描かないかも重要だった」。