現代社会では海外移住への抵抗はずいぶん下がり、日本人も海外に新天地を求める方は老若男女問わず増え、最近では大学卒業後、日本で就職をせず、海外で起業やゼロスタートを切る若者も増えています。それら若者といろいろ話をしてみると日本への期待度が低かったりネガティブイメージを持つケースが大半の理由です。「就職すらしたことがない若者が何をぬかす」とお怒りになる方もいらっしゃると思いますが、彼らは親の背中、あるいは世間一般に垣間見る社会人の性に「もっと夢を、もっと明るい未来を」と思い、自らが外に出ていくわけです。

その点は富裕層が札束を抱きかかえて「税金、ちょっとでも安い方がいい」という亡者的判断基準とは大いに立ち位置を異にします。

私の個人的感覚なのですが、日本人にはお金があれば高級ワイン、旨い飯、海外旅行、できれば別荘的な第2拠点、海外でバカンス、非日常体験の日々…というアッパーライフを目指している方が多い気がします。いわゆる物的満足、充足的満足ですね。しかし、私の周りにいるカナダ人富裕層はそんなライフからはほとんど遠く、ごく普通の質素な暮らしをしています。価値観の相違なのでしょう。

彼らは3つ星のレストランには興味なく、それより厳選された素材を使ってレストランの厨房ほどもある立派なキッチンで優雅に調理をし、客をもてなし、会話をしながらゆっくり食事を摂ることに愉しみを感じています。ハワイに行く日本人は相も変わらず多いのですが、私からすればなぜ、あんな人ごみのハワイに行かねばならないのか、という疑問符が3つぐらいつくのです。行くならメキシコの東海岸とか、カリブ海に浮かぶ島の方がはるかに非日常なのであります。

ある方からカナダ人は接待をしないのか、と聞かれたのでそんなことはないが、接待の基本は昼めし、そしてバンクーバーは資産家の街だけどトロントはビジネスの街だから経費を使う思想はトロントの方が大きく、接待費の費消も大きくなる、と申し上げました。思うに日本の接待はアルコールを飲ませてリラックスさせ、素の付き合いを求めるわけですが、欧米はアルコールなしでも普段から素なのだと思います。カナダではランチに1万円、2万円という金額を払っても日本の2-3000円のランチには勝てないのです。よって私などは接待という感覚そのものをほぼ失ってしまったと言ってもよいのです。接待しなくても仕事は成り立つのだ、ということです。