●この記事のポイント ・大手韓国ゲーム会社・クラフトンが、日本の大手広告会社・ADKホールディングスを買収 ・クラフトン、「PUBG」をはじめとするゲームタイトルのアニメ化やアニメとのタイアップを展開か ・韓国のゲーム業界、PCでプレイするMMO系ゲームが中心だった時代から現在に至るまで海外市場で一定以上の存在感
「PUBG:BATTLEGROUNDS」「inZOI」などの人気タイトルを持つ大手韓国ゲーム会社・クラフトンは、日本の大手広告会社・ADKホールディングス(HD)を買収すると発表した。ADKHDは国内広告業界3位に位置にするが、韓国の大手ゲーム会社であるクラフトンが日本の広告代理店を買収する狙いとは何なのか。また、韓国ゲーム業界ではクラフトンに加え、「ブルーアーカイブ」の開発元であるネクソン、「リネージュ」のNCsoft、「ラグナロクオンライン」のグラビティなど大手がひしめき合っているが、世界ではどのようなプレゼンスを持っているのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
●目次
ADKグループが持つ魅力的なアニメIP群
まず、クラフトンがADKを買収する目的は何か。ゲームプロデューサーの岩崎啓眞氏はいう。
「ADKグループには、古いものも含めて多くのアニメのIPを取り扱っているADKエモーションズという会社があり、そうしたアニメのIPを手に入れたいのではないでしょうか。そのアニメのIPを使ってゲームをつくることまで考えているのかは分かりませんが、大前提として、日本のアニメ関連のビジネスがコロナ禍を経由して世界的に大きく広がっているという状況があります。クラフトンは『PUBG』という強力なIPを持っており、例えば『PUBG』をアニメ化したり、それ以外のゲームタイトルもアニメとタイアップするかたちで展開したりといったことを考えているのかもしれません。
日本では初めからゲームとアニメをタイアップさせるかたちで展開するという形態は一般的ですが、実はこれは海外ではあまりみられない展開方法です。もちろんゲームがヒットした後でそれをアニメ化するという流れはよくありますが、日本のように最初からメディアミックス戦略でいくというのは珍しいです。
海外では、まず映画のIPが先にあって、そこに後からゲームやアニメが乗っかったり、その逆のパターンもありますが、すべて同時に展開するというケースはあまりありません。そういうメディアミックス的な展開のノウハウ、そして市場としてグローバルで大きく伸びているアニメ関連のノウハウを手に入れたいということで、ADKHDを買収したという可能性が考えられます」
テンセントやmiHoYo(ミホヨ)など中国のゲーム開発会社は日本そして世界でも存在感が高いことは知られているが、韓国のゲーム会社はどうなのか。
「日本においては、韓国のゲームというのは以前から一定の存在感があります。例えば有名なタイトルとしては『ラグナロクオンライン』『リネージュ』『ブルーアーカイブ』などがありますが、日本では韓国のゲーム会社が開発したものだと認識されていないケースも多いでしょう。PCでプレイするMMO系ゲームが中心だった時代から現在に至るまで、韓国のゲーム会社は海外市場でも一定以上の存在感を示してきたといってよいと思います。
ただ、コンソール系やPCのシングルゲームは弱く、モバイルゲームをはじめとするオンラインゲームに集中してるのが特徴といえます。また、近年ではインディーズ系のゲーム開発会社のなかには、シングルプレイのノウハウを持っていてクオリティの高いゲームを出すところも出てきています。ですが、大手から強力なシングルプレイのゲームがどんどん出てくるという空気はまだないですね」