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政府から圧力を受ける中央作戦部隊
サンチェス首相の7年にわたる政権運営の中で、首相周辺の汚職が次々と摘発されている。その証拠を収集し、担当判事に提出しているのが、スペインの中央作戦部隊「Unión Central Operativa(UCO)」である。スペインでは検察ではなく判事の指示のもとに捜査部隊が動く制度となっている。UCOは重犯罪、組織犯罪、汚職、殺人、証拠隠滅などの捜査を担う精鋭組織であり、治安警察の管轄下にあるが、その独立性は高い。
現在、サンチェス首相の周囲にいる人物たちに関する証拠がUCOによって集められ、すでに担当判事に提出されている。リストには、首相の夫人ベゴーニャ・ゴメス氏、弟ペドロ・サンチェス氏、元運輸相で前組織委員長のアバロ氏、その秘書コルド氏、現組織委員長のサントス氏、さらに首相夫人の秘書や検事総長まで含まれている。今後も首相周辺の摘発が続くとみられる。なお、首相夫人や弟、元運輸相、同氏の秘書、夫人の秘書については、すでに公判が始まっている。
マフィア化しつつあるサンチェス政権
一般的な民主国家であれば、これだけ多くの政権周辺者が汚職に関与し、その一部がすでに裁判にかけられている状況では、首相は辞任しているはずである。ところがサンチェス首相は例外的な対応を取っており、辞任するどころかUCOを政権の支配下に置こうとしている。これは独裁者が行う手法と同じであり、政権の恒久化を狙った動きだ。