しかも、このハチだけでなく、同じ洞窟内からは数多くの新種と思われる無脊椎動物が見つかりました。

しかし、いずれも“死体”だったのです。

洞窟内は乾燥しており、死後も腐らず保存されていたため、生前の姿をほぼ完全に保っていました。

一部の個体は、壁を登っている最中に死んだらしく、動作の途中で時が止まったかのような状態で発見されました。

一方で、「なぜすべて死んでいたのか」という謎は、いまだに解明されていません。

“生きた個体”は見つかるのか?

マーシュ博士らは、オーストラリア研究評議会などの支援を受け、標本の年代測定と、この洞窟でなぜ生きた個体が見つからなかったのかという謎の解明に取り組んでいます。

洞窟に残されていた生物の年齢を測定し、「この生態系に何が起きたのか」を探ろうとしているのです。

実は、近くの別の洞窟では、生きた新種の大型クモも発見されており、洞窟内で現在も生き続けている種が存在することは確認されています。

このクモもまた、目がなく、淡い体色をしており、巨大な巣を岩の間に張って生息していました。

画像はこちらから。クモが苦手な方は閲覧をお控えください。

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洞窟調査の様子/ Credit: University of Adelaide – World-first highly cave-adapted wasp discovered in Nullarbor Caves(2025)

興味深いのは、これらのクモやスズメバチのような種は、たった1つの洞窟にしか生息していない可能性があるという点です。

これはちょっとした環境の変化や捕食者の侵入によって、簡単に絶滅してしまうことを意味します。

実際、チームが調査中に見つけたのは「スズメバチ」だけではありませんでした。

洞窟内には、大量のキツネの糞や、死んだキツネの個体も確認されました。

現在、キツネが洞窟生物を捕食している可能性についても調査が進められています。