国民年金の支給額の50%は国庫負担(税)だが、これを75%に増やせば、加入者の払う保険料は年額10万円ですむので、社会保険料は年金保険料の半分つまり9%ポイント下げられる。国庫負担率は初期の15%から何回もの改正で上がっており、50%が上限と決まっているわけではない。
国庫負担を25%上げるのに必要な財源は約7兆円で、消費税3%分である。税収中立に設計するなら、消費税率を13%に引き上げる必要があるが、そのぶん社会保険料が9%下がるなら、選択肢としては悪くないだろう。国民年金加入者は、毎月の支払いが1.7万円から8000円に下がる。一挙に国庫負担率を上げるのが政治的に困難なら、60%、70%…と上げてもいい。
この場合の問題点は、今まで保険料を払わなかった人が払った人と同額の年金をもらうのは不公平だという保険料返還訴訟を起こすことだが、これは現実の国民年金でも(半分近い)未納・猶予という形で起こっており、行政的に解決できる。
長期的には全額国費に置き換えると、1階部分が税方式の最低保障年金になり、保険料の返済が必要になるかもしれない。これは年金支給額は変わらず、国が被保険者から借りた積立金を返済するだけで、国民経済全体としてはプラマイゼロなので、立法で返済しないと決める手もある。
貧困者限定の最低生活保障が必要だ国民年金は世界にも類のない「国民皆保険」の年金制度だが、この制度設計には無理があった。無職の人が年金保険料を払えるはずもなく、生活保護と二重支給になることは目に見えていた。今では65歳以上の生活保護受給者の48%が国民年金も受給している。
しかし貧困対策のためなら国民年金(基礎年金)25兆円は過大であり、もっとターゲットを絞って(老人に限らず)支給すべきだ。生活保護200万人の2倍の受給者に年額100万円配っても4兆円であり、国民年金よりはるかに安い。
中途半端な国民年金は廃止し、財源を税に一本化して生活保護に統合すべきだ。そのとき不正利用の温床になっている医療扶助は廃止し、医療費を含めて現金給付する負の所得税に統合することが望ましい。