ひょっとしたら、トランプ氏のことだから、イランとの核協議では「米国を再び偉大な国に」(MAGA)に倣って、「イランを再び偉大な国に」をアピールし、対イラン制裁の大幅な緩和を申し出るかもしれない。経済制裁下で苦しんできたイラン側にとって魅力的な交渉となる可能性はある。

次のシナリオは、イランが核拡散防止条約(NPT)から離脱し、IAEAとの協力を制限し、核開発計画を進めていく出方だ。換言すれば、核開発でイランが北朝鮮方式に出るわけだ。イラン議会は25日、NPT離脱を要求する決議案を可決している。最終的決定は同国の最高指導者ハメネイ師と同国安全保障に関する最高意思決定機関「国家安全保障会議」が下すが、NPTの離脱は国際社会から核兵器製造の表れとしてイラン批判が高まることは間違いない。イランが核兵器製造に乗り出した兆候があれば、米国とイスラエルは再度、空爆も辞さないだろう。

いずれにしても、イランは米軍の激しい空爆を受けたイランの核関連施設で核開発計画を再スタートすることは難しいから、新しい場所で始めるだろう。ただ、米国とイスラエル両国の厳しい監視下で核開発を進めることは非常に難しい。同時に、裨益する国民経済の中、莫大の核開発費用を捻出することは大変だ。

3番目のシナリオは現時点では非現実的だが、ハメネイ師主導の聖職者支配体制の終わり、新しい政権の発足だ。多くの指導者を失い、対イスラエル・米国戦で敗北した現指導部に代わって、西側寄りのリベラルな新政権の発足というシナリオは、現時点では残念ながらまだ夢だ。

英フィナンシャル・タイムズは25日、平和的な核開発計画を装って核兵器生産を進めてきたイランのこれまでの戦略を「壮大な失敗」と評した。一方、ネタニヤフ首相は米軍のイラン攻撃を「歴史的転換の日」と称賛した。すなわち、イランは「壮大な失敗」と「歴史的転換の日」と間に挟まり、民族・国家の命運をかけた新しい出発の時を迎えている。テヘランの指導者が正しい選択を下すことを願う。