●この記事のポイント ・au、日本のモバイルネットワークのユーザー体感に関する調査結果で全17項目のうち10項目で単独首位を獲得 ・Sub6の基地局数は業界最多の5万局 ・ビッグデータや第三者機関の評価なども活用し、客様の体感が実際にどうなっているかを調査して品質改善につなげる

 キャリア(携帯電話会社)のなかでauを手掛けるKDDIの通信品質が向上している。英調査会社・Opensignal(オープンシグナル)が4月に発表した、日本のモバイルネットワークのユーザー体感に関する調査結果「ジャパン・モバイル・ネットワーク・エクスペリエンス・アワード April 2025」(調査期間:1月1日~3月31日)において、auは全17項目のうち10項目で単独首位を獲得した。単独首位となった項目は「動画」「ライブ動画」「ゲーム」「音声アプリ」「下り速度」「5G動画」「5Gライブ動画」「5Gゲーム」「5G音声アプリ」「信頼性」であり、モバイルネットワークへの接続可能時間である「利用率」でNTTドコモと並んで1位となった。auはオープンシグナルが3月に発表した「グローバル・モバイル・ネットワーク・エクスペリエンス・アワード」でも「信頼性エクスペリエンス」「ゲーム・エクスペリエンス」「音声アプリ・エクスペリエンス」の3部門で世界1位となっているが、こうした結果は偶然の産物ではなく、KDDIによる地道な取り組みが実を結んだ結果のようだ。KDDIに取材した。

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契約者様の体感品質を上げるためにネットワーク全体のチューニング

「圏外をゼロに」を掲げるKDDIといえば、4月、スマホでSpace Xの「Starlink(スターリンク)」を利用できる「au Starlink Direct」を開始し話題を呼んだ。KDDIの直接通信で利用できるのは、現状ではSMSなどのテキストメッセージの送受信、位置情報の共有、グーグルの生成AI「Gemini」による検索、緊急地震速報の受信など。夏以降にデータ通信に対応予定とされている。

 KDDIの通信品質が高まっている要因について、KDDI コア技術統括本部 エリア企画室は次のように説明する。

「弊社は5Gが始まった2020年頃から、サービスの土台となる高品質な5Gネットワークエリアをしっかりと構築していくということに取り組んできまして、5Gの基地局は4月時点で十万局を超え、Sub6とミリ波の基地局を合算して5万局超となりました。5Gのネットワークは基地局の数も重要ですが、それだけですと不十分であり、弊社はこの2~3年、契約者様の体感品質を上げるためにネットワーク全体のチューニングに力を注いできました。

 チューニングを行う上でのポイントとしては、お客様目線で『どういった品質にすればいいのか』というターゲットをしっかり決めて取り組むことです。まず5Gのエリア展開戦略としては、導入初期は“面”を迅速に広げることが最重要ポイントになりますので、4Gの転用周波数を使って一気にエリアを広げました。その際、やみくもにカバレッジを広げるのではなく、しっかりとお客様の生活動線、鉄道や商業地域などお客様がよくご利用になられる場所を中心に整備してきました。そして2023年頃から普及期に入ってきた段階で、お客様の利用シーンでトラフィックが多く発生するような場所を中心に、5G専用ネットワークのSub6を一気に広げてきました。このSub6も基地局を数多く設置するということも重要ですが、きちんと機能するようにチューニングをしながら広げることも重要であり、その点に注力をしてまいりました」

 当初は課題もあったという。

「Sub6の基地局を増やし始めた当初、衛星通信に使われる地球局と弊社のSub6の基地局が隣接する場所で通信の干渉の問題を発生させてはならないため、出力を制限しなければなりませんでした弊社が後発の事業者なので出力を制限しなければならなくなり、基地局をたくさん設置したもののSub6のエリアをなかなか広げられないという状況に陥りました。そこで衛星通信事業者様と協議を重ねて地球局を移転していただくことに合意いただき、24年3月をもって出力制限を解除し、Sub6の基地局の出力を最大化できる状況が整いました。

 Sub6については、当初は3.7GHz帯で展開していましたが、弊社は3.7GHz帯と4.0GHz帯の近接した100MHz幅の2ブロックの周波数を保持しており、その点は弊社の強みだと考えております。それによって2つの帯域に対応する無線機を開発することができました。『Dual Band Massive MIMO Unit(DB-MMU)』という2周波に対応したキャリアアグリゲーションを展開できるような無線機です。大阪万博でも利用されていますが、国内初となる商用導入を実現できたことによって、通信速度を大幅に高速化することができました。今後はイベント会場や駅周辺、商業エリアなど混雑している場所に導入して、お客様が快適に使える環境を提供していきたいと考えています」(同)