投資信託には数多くの種類があり、似たような商品がいくつも存在する。その中から投資を行う商品を選択するためには、比較検討することが重要だ。今回は投資信託を比較する際のポイントを、人気インデックスファンドを実際に比較しながら説明していこう。

投資信託を比較するときは前提となる条件をある程度揃えることが必要

投資信託を比較する際は、前提として次のポイントを確認しておこう。

  • インデックスファンド or アクティブファンド
  • ベンチマーク(運用の目安となる指数)は同じか?
  • 決算回数や為替ヘッジの有無など、商品性に違いはないか?

    インデックスファンドはベンチマークとの連動を目指す投資信託であり、アクティブファンドはベンチマークを上回る運用実績を目指す投資信託である。両者は運用の目的が異なるため、これらのパフォーマンスやコストを比較しても的外れな分析となってしまう。

    投資信託のベンチマークが同じかどうかも確認が必要だ。特にインデックスファンドの場合、ベンチマークが異なればパフォーマンスやコストに差が出るのは当然である。

    今回比較する3商品はともにインデックスファンドであり、いずれもベンチマークをMSCIコクサイ・インデックス(配当込み、円換算ベース)としている。決算回数は年1回、為替ヘッジを行わないという点でも共通しておりポイントを絞って比較しやすいだろう。

人気のインデックス型投資信託を実際に比較

今回は、先進国株式型のインデックスファンドより、個人投資家からの人気が高い次の3本をピックアップして比較してみよう。

  • ニッセイ外国株式インデックスファンド(ニッセイアセットマネジメント)
  • eMAXIS Slim先進国株式インデックス(三菱UFJ国際投信)
  • たわらノーロード 先進国株式(アセットマネジメントOne)

    投資信託の比較においては、コストだけでなく、パフォーマンスや運用実績、純資産総額など様々な点から分析することが重要だ。

投資信託の比較ポイント1……投資信託にかかる3つのコストが安いかどうか

コストの比較は最も重要なポイントだろう。投資信託には様々なコストが掛かるが、パフォーマンスが同じならコストが安ければ安いほど有利になる。わずかなコストの違いでも、長い期間で見れば大きな差となる可能性もある。投資信託でかかるコストは以下の3つだ。

  • 買付手数料……無料~購入額の3%程度
  • 信託財産留保額・換金手数料(売却時コスト)……無料~売却時基準価額の1%未満
  • 信託報酬(運用管理費用)

    今回比較を行う3商品については、買付手数料と売却時コストは全て無料となっているため、この点においては差がない。

信託報酬(運用管理費用)は長期的に見ると大きな差が出るポイント

信託報酬は投資信託の運用や管理の対価として支払うコストだ。保有期間中は常にかかるため、年率換算では僅かな差であっても、長期投資の場合には大きな差に繋がる可能性もある。信託報酬は投資信託の比較において重要なポイントだろう。

今回、比較を行う3商品の信託報酬は次のようになっている(2019年10月8日時点)。

  • ニッセイ外国株式インデックスファンド……年率0.11099%(税込) ※監査費用を含む
  • eMAXIS Slim先進国株式インデックス(三菱UFJ国際投信)……年率0.10989%(税込)
  • たわらノーロード 先進国株式(アセットマネジメントOne)……年率0.22%(税込)

    これら3商品は非常に低い信託報酬率を誇る優秀な投資信託である。なかでも最も低いのは「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」で、信託報酬率はおよそ0.1%だ。「たわらノーロード 先進国株式」のコストも十分低い水準ではあるが、他の2つと比べて信託報酬は倍近くかかる。

投資信託の比較ポイント2……過去の運用実績がいいかどうか

投資信託の比較を行う際の2つ目のポイントはパフォーマンスである。過去の運用実績を比較することで、それぞれの運用の特徴や傾向を分析できる。パフォーマンスの比較を行う場合、インデックスファンドとアクティブファンドで異なった視点を持つ必要がある。

インデックスファンドはベンチマークとの差を比較する

インデックスファンドの目的は、ベンチマークとの連動を目指すことである。いくら大きな利益を上げていても、ベンチマークから大きくかけ離れた値動きとなっていれば、良いインデックスファンドとは言えない。いかにベンチマークとの差を小さくできているかが重要であろう。

今回比較を行う3商品の過去1年間の運用実績に対するベンチマークとの差は次のようになっている(2019年10月8日時点)。

  • ニッセイ外国株式インデックスファンド……+0.2%
  • eMAXIS Slim先進国株式インデックス(三菱UFJ国際投信)……+0.1%
  • たわらノーロード 先進国株式(アセットマネジメントOne)……-0.5%

    いずれもベンチマークとの差は1%以下となっており、おおむねベンチマークに連動した運用を行っているといえよう。そのなかでも、「ニッセイ外国株式インデックスファンド」は、過去3年間の運用実績においてベンチマークとの差が-0.1%となっており、パフォーマンス面では信用がおける投資信託といえる。

    インデックスファンドにおいてベンチマークとの差を比較するときは、短期間、長期間など、複数の時間軸で見るようにしたい。

アクティブファンドは純粋にリターンの大きさで比較する

アクティブファンドの場合は、いくら利益を出したかが重要な評価ポイントとなる。比較の際は、同じ期間において、いくらリターンを上げたかを純粋に評価すべきである。

また、ベンチマークとの比較も重要だ。リターンが上がっていても、その数値がベンチマークより劣っていれば、同じベンチマークを持つインデックスファンドに投資したほうがいい。アクティブファンドは運用にかかるコストが高い分、ベンチマークを上回るリターンを残すことが求められる。

投資信託の比較ポイント3……純資産総額が大きいかどうか

投資信託の比較を行う際の3つ目のポイントは純資産総額である。純資産総額の比較が重要な理由は主に次の2つだ。

投資信託が市場の評価を得ているかを判断できる

その投資信託が市場の評価を得ているかを判断できる点である。純資産総額の大きい投資信託はそれだけ多くの投資家に支持されているといえる。

投資信託の運用の安定性を測ることができる

投資信託は解約の依頼があった場合、投資資産を売却して投資家へ返金しなければならない。純資産総額の少ない投資信託であれば、大口の解約依頼があった場合に、運用に支障の出るような売却を行わなければならない可能性もある。純資産総額が大きければ、多少の解約には動じない安定した運用ができるのである。

今回比較を行う3商品の純資産総額は次のようになっている(2019年10月8日時点)。

  • ニッセイ外国株式インデックスファンド……1,279億円
  • eMAXIS Slim先進国株式インデックス(三菱UFJ国際投信)……542.25億円
  • たわらノーロード 先進国株式(アセットマネジメントOne)……369.96億円

    いずれもインデックスファンドとしては大きな純資産総額を誇っている。そのなかでも「ニッセイ外国株式インデックスファンド」の純資産総額は一際大きく、より安定性があるといえよう。

    純資産総額の伸びという視点で比較するのもポイントだ。たとえば「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」は2017年2月に設定された投資信託なので、約2年半という短期間で多くの資金を集めたといえる。

投資信託の比較は様々な角度から行って総合的な判断を

今回例に挙げた3つのインデックスファンドの場合、コストで見れば、「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」にアドバンテージがあるが、パフォーマンスや純資産総額に目を移すと「ニッセイ外国株式インデックスファンド」が優れていることが分かる。

各比較ポイントにおいて優れているのはどの商品か、それぞれの差は許容できるレベルなのかといった点も確認しながら投資する商品を選ぶ必要がある。投資信託の比較検討に際しては、様々な角度から総合的に分析して投資判断をしたい。

文・樋口壮一(金融ライター)
 

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