海面から、黒く、丸い何かが、静かに——波間からまるで呼吸をしているかのように——半分だけ姿をのぞかせている。それは何の音も立てず、まったく揺れもせず、ただそこに「浮かんでいる」。
あまりの不気味さに、無意識に目を逸らしました。鼓動は耳の奥で鈍く響き、手のひらは湿ってきます。「あれは人?それとも……?」と頭の中がぐるぐる。でも潮が引くまでは帰れない。
ただのブイに安心
帰りたいけど帰れない、恐怖でガクガクしながらも もう一度確認する決心をし、今度はライトで照らし見てみると——それは、ただの黒いブイでした。(笑)
腰が抜けそうになりましたが、崩れ落ちたら海。必死で踏ん張りながら、「んだぁ!……」と虚勢を張りつつ胸をなで下ろしました。気づけば空は少しずつ明るくなり、夜明けは近づいていました。釣果はゼロ。でも、違う意味で忘れられない一夜となりました(笑)。

<刀根秀行/TSURINEWSライター>