映画では、恐ろしい速度で走る恐竜たちが登場します。
『ジュラシック・パーク』のラプトルが猛スピードで獲物を追いかける姿は、多くの人の脳裏に焼き付いているはずです。
でも実際は、彼ら恐竜たちのスピードは私たちが思っているほど速くなかったかもしれません。
イギリスのリヴァプール・ジョン・ムーア大学(LJMU)の研究チームは、現代の「走る鳥類」を使った実験により、これまで化石の足跡から推定されていた恐竜のスピードが過大評価されていた可能性があると発表しました。
特に、二足歩行の恐竜ではその傾向が顕著であり、「走っていた」とされていた足跡が、実は「歩いていただけ」だったかもしれないのです。
この研究成果は、2025年6月25日付の『Biology Letters』誌に掲載されました。
目次
- 恐竜の足跡は本当のスピードを語るのか?
- 足跡のスピード測定は間違い!?恐竜の「歩いてただけ」が「全力疾走」に見えていた?
恐竜の足跡は本当のスピードを語るのか?

恐竜の化石足跡は、数千万年も前に生きていた動物たちの動きを記録する貴重な証拠です。
研究者たちは長年にわたり、これらの足跡からスピードを推定する手法を用いてきました。
その代表的なものが、1976年に動物学者アレクサンダーが提唱した計算式です。
アレクサンダー式は、歩幅や脚の長さから速度を算出する経験式で、特に恐竜のような大型の絶滅動物の行動再現に広く使われてきました。
しかし、今やこの式に懐疑的な人は少なくありません。
なぜならこの式は、「動物が固くて乾燥した地面を歩いている」という仮定のもとに構築されたからです。
一方、研究対象となる「恐竜の足跡」は、柔らかい泥の上を恐竜の足が踏んだ時に形成されるものであり、その状況ゆえ、足跡が伸びたり歪んだりして、歩幅が誇張される可能性があります。