25年度は約2000名の参加者数を目標に

 これまでの参画企業は、フェイスブックジャパン、マイクロソフト、SCSK、NTTデータ、富士通、メルカリ、ファーストリテイリング、サイバーエージェント、グーグル、コニカミノルタ、NEC、デロイトトーマツ、コクヨなど。参加者数は、22年度80名(応募倍率7.5倍)、23年度218名(9.1倍)、24年度546名(13.5倍)と順調に増えつつある。

 25年度は約2000名の参加者数を目標に据えている。松本氏は「オフィスツアーは参画企業が増えており、この課題への問題意識が高まっている」と手応えを実感している。参加者アンケートによると「STEM分野で働きたい」がオフィスツアー参加によって、参加前の30.4%から85.2%へと約55ポイントアップした。ツアー3カ月後に実施したアンケートには「進路のコース選択に迷っていたが、理系の進路に決めた」「文系でもITのためにできる仕事があることがわかり、職業選択の幅が広がった」「将来の選択肢にデジタル関係の職業を考え始めた」などの受け止めが報告されている。

小池知事と参加学生の質疑応答

 さらに、この会見当日には、東京都の外郭団体で都と都内市区町村のデジタル化を担う一般財団法人GovTech東京(東京都新宿区)のオフィスツアーが実施された。参加したのは品川女子学院高等部の23名。小池百合子東京都知事に質問する機会も設けられ、3名が質問した。以下は質疑応答の要旨である。

参加学生 大学受験を見据えたときに「やりたい」「なりたい」よりも、今「できる」「できない」に目が向いてしまう。私は文系を選んだが、それは数学や理科が苦手だからだ。しかし、やりたいことは理系分野を応用したジェンダー政策で、自分の文理選択が正しかったかを後悔している。どのように行動すれば自分の選択を後悔せずに済むのか教えてほしい。

小池知事 悩むことは自分を考える良い機会になっていると思う。文系、理系とはっきり決めてしまうのは日本の空気だと思うが、生活の中で数学的な思考が必要だったり、日記を書くときの文学的な表現だったり、いろいろと交差してこそ価値があると思う。今の世の中はそれぞれが響き合って答えを出すことが多いので、これからもしっかりと悩みながら幅広く勉強してほしいと思う。大学生活の後も残るのは自分の好きなことなので、好きなことを極めればよいのではないか。

参加学生 女性が管理職に就くことは少ないとよく耳にするが、小池さんは女性の社会進出をどのように考えているのか聞かせてほしい。

小池知事 高校・大学までの成績はだいたい男子よりも女子のほうが良いが、社会に出ると逆転現象が始まるという時代が長く続いてきた。しかし社会で、女性が培った学びを活かさない手はない。日本の社会はゲームチェンジが欲しいが、ゲームチェンジを担うのは女性で、女性の力を活かさない企業は生き残れないと思う。できることから始めることだが、まず都としてできることは、都庁で女性管理職を増やして、これまでとは違う見方を都政に取り入れて都政をリッチにすることだ。

参加学生 小池知事が学生時代にやって良かったと思うことは何か。

小池知事 クラブ活動でESSに入り、英語劇にチャレンジしていた。自分で脚本を書いたり、舞台の設えをやったりしたことを今でもよく覚えている。自分の好きなことを思い切りやれば、失敗も良い思い出になって糧になっている。この前、AIに「日本はどうなるか?」と聞いてみたら「22世紀には120歳まで元気で死ねない」と。皆さんの人生はあと100年以上あるので、周りを気にせず今だからやりたいことに思い切りチャレンジしてほしい。チャレンジしただけ糧になると思ってほしい。

 山田進太郎D&I財団は、中高生女子の理系選択を支援するツアーを25年度は112企業・機関、32大学、8高専で実施する。文部科学省が発表した「学校基本調査」データを元に同財団が実施した調査によると、大学入学者のうちSTEM(理工学部)の女性比率は21年度に17.90%、24年度に20.65%だった。同財団はこの比率を35年度に28%に引き上げることを目標に据えている。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)