●この記事のポイント ・東京都、都内在学・在住の女子中高生を対象にSTEM分野の職場を体験するオフィスツアーを実施 ・メルカリ創業者の山田進太郎CEOが設立した公益財団法人「山田進太郎D&I財団」と今年1月に連携協定を締結し、職場体験オフィスツアーを共催 ・参加者数は22年度80名、23年度218名、24年度546名と順調に増えつつある

 OECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本の女性の15歳時点の科学・数学のリテラシーはOECD平均を上回っている。だが日本では、STEM分野で大学卒業生に占める女性比率が17.5%にすぎず、OECD38カ国のなかで最下位となっている。東京都生活文化スポーツ局が高校生を対象に調査したところ、男女の39.4%が「性別で教科の得意・不得意があると思う」と回答した。「理系科目は男性のほうが得意だと思う」は、男性19.6%、女性33.2%。「文系科目は女性のほうが得意だと思う」は、男性22.1%、女性34.6%だった。

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文理の選択前にSTEM分野の仕事に触れる機会を提供

GovTech東京の職員とともに小池百合子知事は品川女子学院高等部の生徒と懇談
(画像=GovTech東京の職員とともに小池百合子知事は品川女子学院高等部の生徒と懇談)

 上記の現状について、6月11日に開かれた記者会見で松本明子東京都副知事は要因に言及した。

「日本の女子学生の理科や数学の学力は世界でもトップレベルだが、社会に出てからSTEM分野で活躍する日本人女性はまだまだ少ない。その要因は2つあると考えている。ひとつは今の女子学生にとってロールモデルが少ないこと。もうひとつは、女子学生は理系の科目が苦手という固定観念がいろいろなところにはびこっており、進路選択の幅を狭めていると思われることである」

 打開策として東京都は、大学進学における文理の選択前にSTEM分野の仕事に触れる機会を提供して、興味を高めることが重要と考えた。そして2022年から、都内在学・在住の女子中高生を対象にSTEM分野の職場を体験するオフィスツアーを実施して、STEM分野で働く女性社員との交流や、仕事を体験する機会を提供している。

 STEMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の4つの学問の総称である。参画企業は22年度にわずか1社だったが、23年度に5社、24年度に12社と徐々に増えた。メルカリ創業者の山田進太郎CEOが設立した公益財団法人「山田進太郎D&I財団」と今年1月に連携協定を結び、25年度は本取り組みを共催。同財団が2024年から実施する中高生女子向けツアーの取り組みと合流し、同財団が参画企業の募集を担ったことで、参画企業は一気に増えた。25年度はすでに60社近くに達したという。

松本明子東京都副知事
(画像=松本明子東京都副知事)

 山田氏はオフィスツアーの狙いをこう語った。

「将来の進路を選ぶ前にいろいろな仕事を知って、自分の好きや興味を育むキッカケとなる場をめざしている。今後は東京都で実現した自治体との協力モデルを第一号として全国にも広げ、より多くの中高生女子にSTEM領域の仕事に触れる機会を届けていきたい」