つまり、ある行動が一つの集団でだけ観察されるなら、それは“文化”の現れといえるのです。
今回のアロケルピングは、他のシャチの群れでは確認されておらず、サザンレジデントに特有の文化的行動である可能性が極めて高いと考えられます。

今回の発見は、サザンレジデントのシャチたちが単なる動物以上の存在であること――複雑な社会を持ち、独自の文化を継承している存在であることを改めて示しています。
しかし、その文化も彼らの命とともに消えかけています。
サザンレジデントのシャチたちは、主にキングサーモンを食べて生きていますが、その数はダム建設や過剰漁獲、気候変動などによって激減しています。
彼らは生きるためのエネルギー源を確保することが難しくなっており、出生率も著しく低下しています。
さらには、今回彼らが“道具”として使っていたオオウキモも、温暖化の影響で衰退しています。
シャチという種を守ることはもちろん大切ですが、彼らが持つ文化、知性、そして仲間を思いやる心までもが失われつつあることに、私たちはもっと目を向けるべきかもしれません。
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参考文献
Killer whales make seaweed ‘tools’ to scratch each other’s backs
https://news.exeter.ac.uk/faculty-of-health-and-life-sciences/killer-whales-make-seaweed-tools-to-scratch-each-others-backs/
Orcas’ Strange Beauty Routine Revealed by Scientists For The First Time
https://www.sciencealert.com/orcas-strange-beauty-routine-revealed-by-scientists-for-the-first-time