プライバシー保護は後退している?
残念ながら、一部の企業ではプライバシー保護を強化するどころか、むしろ後退させる動きも見られる。例えばAmazonは、2025年3月28日以降、同社のスマートスピーカー「Echo」で録音されたすべての音声データを、デフォルトで自社のクラウドに送信し、ユーザーがこの機能をオフにできなくすると発表した。これはデータ収集を制限できた以前の設定とは大きな違いだ。
こうした変更は、私たちがスマートデバイスを使う上で、自分のデータをどれだけコントロールできるのかという深刻な問いを投げかける。

AI時代を賢く生き抜くために、私たちができること
AIツールが収集したデータは、あなたが信頼する企業の手に渡った後、あなたが信頼していない企業に簡単に売り渡される可能性がある。また、サイバー攻撃やデータ侵害によって、機密情報が流出するリスクも常にある。
EUのGDPR(一般データ保護規則)のような規制は存在するものの、AIの進化に法整備が追いついていないのが現状だ。だからこそ、私たちは自衛策を講じる必要がある。
まず、生成AIに質問や指示を入力する際は、氏名、生年月日、住所といった個人情報や、職場の機密情報を決して含めてはならない。「街中の巨大な看板に表示されても恥ずかしくないこと」だけを入力する、と心に刻もう。エンターキーを押した瞬間、その情報のコントロールはあなたの手から離れるのだ。
そして、スマートデバイスは「電源が入っている限り、常に聞いている」ことを忘れてはならない。プライベートな会話をする際は、スリープ状態にするのではなく、コンセントを抜くかバッテリーを外して、完全に電源をオフにすることが確実だ。
最後に、利用しているサービスやデバイスの利用規約、データ収集ポリシーに一度目を通してみよう。あなたが既に何に同意してしまっているのかを知れば、きっと驚くはずだ。AIの利便性を享受しつつも常に注意を払い、賢く付き合っていく意識が不可欠なのである。
参考:Live Science、ほか
文=深森慎太郎
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