●この記事のポイント ・三島会社であるJR北海道、JR四国、JR九州の業績の明暗が鮮明に ・JR北海道、JR四国の1営業キロ当たりの営業収益はJR九州の半数程度 ・JR北海道、JR四国が鉄道事業で営業利益を計上するには路線の廃止を進めつつ、小幅な値上げを行うしか方策はない

 国鉄民営化に伴い独立したJR北海道、JR四国、JR九州は三島会社と呼ばれ、設立当初から経営安定基金の運用益で赤字を補填することが想定されるなど、苦しい経営が予想されていたが、現在、業績の明暗が鮮明になりつつある。2025年3月期決算を見てみると、JR九州は営業利益が589億円の黒字と好調な一方、JR四国は同130億円の赤字で、JR北海道は同482億円の赤字。JR四国とJR北海道は経営安定基金の運用益と鉄道・運輸機構が発行する特別債券利息による補填、さらにJR北海道は国からの補助金により純利益ベースでかろうじて黒字を維持している状態だ。3社ともに限られた営業エリアという点は同じ条件だが、何が業績の差を生んでいるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

●目次

各社の鉄道事業の営業収支を分析

 三島会社に共通しているのは、人口減少で鉄道事業の先細りが予想されるなか、非鉄道事業の拡大に注力している点だ。たとえばJR九州は運輸サービス業の営業収益(=売上高)が1643億円なのに対し、不動産・ホテル業は同1383億円に上る。なぜJR九州だけが営業利益の黒字を維持することができているのか。鉄道ジャーナリストの梅原淳氏はいう。

「各鉄道会社の連結決算ではなく、個別財務諸表に載っている鉄道事業の営業収支で話を進めたいと思います。JR九州が鉄道事業で134億円の営業利益を得ることができ、JR北海道が567億円、JR四国が148億円の営業損失をそれぞれ計上した理由として挙げられるのは、1営業キロ当たりの営業収益の違いです。営業キロ2342.6kmのJR九州は営業収益が1671億円で1営業キロ当たりの営業収益が7131万円であったのに対し、2254.9kmのJR北海道は908億円に対して4027万円、853.7kmのJR四国は304億円に対して3561万円でした。JR九州の1営業キロ当たりの営業収益に対してJR北海道は約57パーセント、JR四国は約50パーセントしかありません。

 一方で1営業キロ当たりの営業費は3社ともほぼ同じです。JR九州は営業費が1537億円で1営業キロ当たりの営業費は6559万円であったのに対し、JR北海道は1475億円で6541万円、JR四国は452億円で5295万円でした。

 なぜJR北海道、JR四国の1営業キロ当たりの営業収益がJR九州の半数程度なのかは、単純に利用者が少ないからです。旅客輸送密度または平均通過人員といって1日の1営業キロ当たりの旅客の輸送量を示す数値はJR九州が8808人であったのに対し、JR北海道は3759人、JR四国は3589人と半数以下でした(旅客輸送密度のデータはいずれも2022年度)」