黒坂岳央です。

AIの急速な進化は、我々の働き方を根底から揺るがしている。

世界経済フォーラム(WEF)によれば、2030年までに最大9,200万件の職務が自動化で置き換わる一方、7,800万件の新たな職務が生まれる可能性があるとある。厳密に言えば、「仕事が消える」というより、エントリーレベルの定型作業が縮み、AIをマネジメント・補完できる仕事が伸びるという構図だ。

この質的なシフトを制した者にとって、仕事は希少価値の高い「贅沢品」として残る一方、対応を怠れば雇用のパイから排除されるリスクが高まる。

「未来は誰にもわからない」という大前提はあるので、これも一つの個人的予想の域を出ない。だが、一部の人にとって仕事は「贅沢品」になっていくと考えている。

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現在進行系でAIが仕事を奪っている

現実としてAIは次々と人間の仕事を奪っている。日本でもコールセンター業務がAIに置き換わっており、KDDIやみずほフィナンシャルグループが導入した音声ボットで年間500万コールを自動化済だ。

アメリカでは本来、コンサルが担当していた分析や資料作成が生成AIに取って代わられている。アメリカのMBA新卒の失業率はトップスクールほど高い。ハーバード大学の2024年卒の24%が卒業 3 か月後も未就職となっている。2020年代に入り、AIによる自動化で失われた雇用は数百万人規模に上るとされる。

技術の進歩が雇用に与える影響は、歴史を振り返れば明らかだ。例えば産業革命では、手織り職人が機械に取って代わられ、多くの失業者が生まれた。また、インターネットの普及でマスメディアの収益率は著しく減少した。

重要な点は、これらの変化は一時的なものではなく、不可逆的であることだ。経済不況などで一時的に雇用控えが起きているわけではなく、その質的なマクロ環境の変化は恒久的に続く。AIも同様に、一度奪われた仕事が元に戻ることはなく、私たちは新たな現実を受け入れるしかないのだ。